ヨーク

ヨーク（York, Yorke, Yoke, Jork）

「ヨーク」という言葉は、スペルにいくつかのバリエーション（York, Yorke, Yoke, Jorkなど）があるだけでなく、その文脈によって非常に多様な意味合いを持つ多義語です。普通名詞としての用例から、世界中に散らばる地名、歴史上の重要な名称、さらには現代の企業名や組織名、個人名に至るまで、幅広い分野で使用されています。ここでは、「ヨーク」という言葉が持つ様々な側面について詳しく見ていきましょう。

普通名詞としての「Yoke」

最も古く基本的な意味合いは、農耕などで牛や馬を一緒に繋ぎ、犂（すき）などの農具を引かせるための木製の道具、「くびき」を指します。この「くびき」の形状や、二つのものを繋ぐという概念から派生して、様々な分野で使われるようになりました。

衣服: ファッションの分野では、衣服の特定の切り替え部分を指します。例えば、肩の部分やスカート、パンツなどの腰回りや上部で、布地を切り替えてギャザーやタックを寄せたり、デザインのポイントとしたりする部分を「ヨーク」と呼びます。「肩ヨーク」や「ヨークスカート」といった言葉で知られています。
航空: 航空機の操縦装置の一種として、「フライトヨーク」があります。これは、自動車のハンドルのような形状ではなく、H型やU字型をした操縦桿を指すことが多いです。
電気工学: 継電器やアクチュエータといった電磁部品において、磁束の通路を形成する着磁可能な鉄片部分を指すことがあります。狭義には、この着磁された鉄片そのものを指す場合もあります。

地名としての「York」

「ヨーク」という地名は、特に英語圏を中心に世界各地に存在します。最も有名なのは、イングランド北部のノース・ヨークシャー州にある歴史都市ヨークでしょう。この都市はローマ時代にまで遡る古都であり、歴史的な建造物が数多く残されています。このヨーク市を本拠地とするサッカークラブ、ヨーク・シティFCも存在します。また、イングランド国内にはランカシャー州にも同名の都市があります。

アメリカ合衆国には、さらに多くの「ヨーク」という名の場所があります。アラバマ、アラスカ、ペンシルベニア、ネブラスカ、ニューヨーク、メイン、ノースダコタ、サウスカロライナといった様々な州に、都市や町としてヨークが存在します。また、五大湖の一つ、スペリオル湖のアポストル群島にはヨーク島があり、各地にヨーク郡やヨーク郡区といった行政区画も存在します。

イングランドやアメリカ以外にも、地名としてのヨークは広範囲に見られます。

カリブ海: アンティグア・バーブーダにヨーク島があります。
北極圏: グリーンランドにはヨーク岬という岬があります。
西アフリカ: シエラレオネには、ヨークという小さな町や、ヨーク島とその中心地であるヨーク村が存在します。
オーストラリア: クイーンズランド州の北東端には広大なヨーク岬半島が突き出ており、同じくクイーンズランド州にはヨーク島もあります。
カナダ: オンタリオ州のトロント市には、ヨーク、ノースヨーク、イーストヨークといった複数の地区があり、さらに広域の行政区画としてヨーク地域があります。ブリティッシュコロンビア州にもヨーク島があります。
ドイツ: ニーダーザクセン州に、ドイツ語の発音は「ヨルク」に近いものの、ヨークと表記される町村があります。

人名・称号・家名としての「York」

「ヨーク」は姓としても使われます。例えば、ニュージーランドの総合格闘家ジム・ヨーク、イギリスのロックバンド、レディオヘッドのボーカルであるトム・ヨーク、トリニダード・トバゴ出身の元サッカー選手ドワイト・ヨークなどがこの姓を持っています。

また、歴史上の重要な称号や家名としても知られています。

ヨーク公爵: イギリス王室において、古くから存在する公爵位の一つです。王位継承権者などが叙されることが多い称号です。
ヨーク家 (House of York): 中世イングランド史において、薔薇戦争などでランカスター家と対立し、最終的にヨーク朝を興したプランタジネット朝の分枝です。
ヨーク朝: 上記のヨーク家出身のエドワード4世が開いたイングランドの王朝（1461年 - 1485年）です。
ヨーク家 (Yorke family): これとは別に、18世紀にコーンウォリス伯爵家から分かれたイギリス貴族の家系もヨーク家と呼ばれます。

組織名・企業名としての「York」

教育機関や企業の名前としても「ヨーク」が用いられています。

大学: カナダのトロントにあるヨーク大学（York University）、イングランドの都市ヨークにあるヨーク大学（University of York）、ニューヨーク市立大学システムの一つであるニューヨーク市立大学ヨーク校などがあります。
* 企業: 愛知県の食品会社である愛知ヨークは、かつての飲むヨーグルト商品名「アシドミルク」に由来します。日清食品グループの日清ヨークも、当初愛知ヨーク商品の販売を手がけたことから名がつきましたが、現在資本関係はありません。「十勝のむヨーグルト」の旧商品名としても使われました。小売業では、東北地方を中心に展開するスーパーのヨークベニマル（紅丸商店とイトーヨーカ堂の提携に由来）や、かつてセブン&アイ・ホールディングス傘下にあった小売企業「ヨーク」（現在はイトーヨーカ堂に吸収合併）があります。

艦船名としての「York」

イギリス海軍では、複数の軍艦が「HMS York」の名を受け継いでいます。これには、18世紀に進水した戦列艦が複数隻、第二次世界大戦で活躍したヨーク級重巡洋艦、そして後の世代の駆逐艦などが含まれます。

このように、「ヨーク」という一見シンプルな響きの言葉は、その背景にある歴史や文化、地理、技術など、実に様々な文脈で用いられる多義的で奥深い言葉と言えるでしょう。

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