ラリー・スウェーデン

ラリー・スウェーデン：北欧の雪上を駆ける WRC の祭典

ラリー・スウェーデンは、世界ラリー選手権（WRC）を彩る冬の風物詩です。スウェーデンを舞台に、雪と氷に覆われたコースを駆け抜ける、世界屈指のウィンターラリーとして知られています。かつてはミッドナイト・サン（白夜）ラリーとして真夏に開催されていましたが、1965年からは真冬に開催されるようになり、WRC開幕戦モンテカルロに続く冬季ラリーの目玉として確固たる地位を築いています。

歴史と変遷

1950年にインターナショナル・スウェーデン・ラリーとして誕生した本イベントは、長い歴史の中で幾多の変遷を遂げてきました。2010年には、ラリー・ノルウェーの中止を受け、ノルウェーとの共催で開催されたこともありました。

その歴史において、ラリー・スウェーデンは、スカンジナビア勢、特にスウェーデンとフィンランドのドライバーたちが圧倒的な強さを誇るラリーとして知られてきました。長年にわたり、両国のドライバーたちが表彰台を独占する光景は珍しくありませんでした。しかし、近年は、セバスチャン・ローブ（フランス）、セバスチャン・オジェ（フランス）、ティエリー・ヌービル（ベルギー）、オィット・タナック（エストニア）、エルフィン・エバンス（イギリス）といった、北欧以外のドライバーたちも優勝を飾っており、国際的なラリーへと進化を遂げています。

近年は、地球温暖化の影響もあり、雪不足による開催への影響が深刻化しています。1990年には雪不足のため開催中止となり、2016年には雪不足によりスケジュールを大幅に短縮しての開催を余儀なくされました。2020年も同様の理由で、スペシャルステージ（SS）の数が大幅に削減されました。2021年には、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、開催中止という苦渋の決断を下しました。2022年には、開催地がウメオへと変更され、北極圏に近いルートに変更されるなど、新たな挑戦を続けています。

極寒の雪上コース：独特のテクニックと挑戦

ラリー・スウェーデン最大の特徴は、そのコースにあります。針葉樹の森の中を縫うように走るグラベルコースは、雪や氷で覆われ、まさにスノーラリーの代名詞と言えるでしょう。氷点下20度を下回る極寒の中で行われる過酷なラリーでは、低温による油圧系統の不具合や、雪の吸気によるエンジンのオーバーヒートといった、特殊な問題にも対処しなければなりません。また、近年は気温の上昇や積雪量の減少も課題となっています。

コースは比較的フラットで高速コーナーが連続しており、その平均速度は、グラベルラリーとして知られるラリー・フィンランドに次ぐ速さです。雪上を高速で駆け抜けるため、ドライバーは、コースサイドの雪壁（スノーバンク）にマシンの鼻先を当てて向きを変える、特殊なテクニックを駆使します。

さらに、ラリー・スウェーデンでは、特殊なスパイクタイヤが使用されます。幅約20cmのナロートレッドに380本以上のスタッドを打ち込んだこのタイヤは、接地面の面圧を高め、氷上での強いグリップ力を生み出します。しかし、ループ走行では、グラベルが露出してスタッドが脱落するリスクもあるため、タイヤの管理も重要になります。

コリンズ・クレスト：伝説のジャンプスポット

ヴォルゴーセン（Vargasen）のスペシャルステージには、「コリンズ・クレスト」と呼ばれる有名なジャンプスポットがあります。かつてコリン・マクレーが豪快なジャンプを見せたこの場所は、多くの観客が詰めかける名物スポットとなっています。マクレーの死後、2008年からは、このジャンプで最も長い飛距離を記録したドライバーに「コリンズ・クレスト賞」が贈られるようになりました。

未来への展望

ラリー・スウェーデンは、その歴史、コース、そして伝統を受け継ぎながら、新たな課題にも挑戦し続けています。気候変動やパンデミックといった困難を乗り越え、今後も世界中のラリーファンを魅了するイベントであり続けることでしょう。 今後のラリー・スウェーデンの発展に期待が高まります。

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