エルフィン・エバンス

エルフィン・エバンス：WRCを駆け抜ける英国の星

エルフィン・エバンス（Elfyn Rhys Evans）は、1988年生まれのイギリス人ラリードライバーです。世界ラリー選手権（WRC）において、Mスポーツを経て2020年からTOYOTA GAZOO Racingで活躍を続けています。WRCにおける数々のドラマチックなレース、そして彼の個性的なドライビングスタイルとキャリアの軌跡を紐解いていきましょう。

父の足跡とラリーへの道

エバンスの父は、元フォードのWRCワークスドライバーであり、1996年のイギリスラリー選手権（BRC）チャンピオンであるグウィンダフ・エバンスです。グウィンダフは、彼が設立したフォード系ディーラーを基盤にラリー活動を続けました。そんな環境で育ったエバンスは、家業である自動車ディーラーで働きながら、幼い頃からラリーの世界に深く関わってきました。2007年、フォード・フィエスタでラリーデビューを果たし、WRCへの道を歩み始めます。

才能が開花：WRCアカデミーチャンピオンからWRCトップカテゴリーへ

2010年にはイギリスジュニア選手権とフォード・フィエスタトロフィーでチャンピオンに輝き、その才能を証明しました。その後、2012年にはWRCアカデミー（JWRC）でチャンピオンを獲得。さらに、翌2013年にはMスポーツからWRC2にステップアップし、ラリーGBで初優勝を飾ります。同年、WRカーにもスポット参戦し、いきなり6位入賞という快挙を成し遂げました。この頃からはMスポーツ近くのワークショップでメカニックとして働くようになり、チーム内での技術的な知識も深めていきました。
2014年、WRCトップカテゴリーにデビュー。当初は苦戦を強いられますが、2015年にはアルゼンチンとフランスで表彰台を獲得。2016年にはWRC2に降格しながらも3勝を含む5度の表彰台を獲得し、ランキング3位を獲得。さらに同年、イギリスラリー選手権でもチャンピオンに輝き、親子二代でチャンピオンとなる快挙を達成しました。

Mスポーツでの活躍とTOYOTA GAZOO Racingへの移籍

2017年はDMACKタイヤを使用し、グラベル路面で圧倒的な速さを見せつけました。アルゼンチンでは惜しくも僅差で優勝を逃しましたが、地元イギリスでのラリーGBではWRC初優勝を飾ります。この勝利は、DMACKにとっても初優勝であり、Mスポーツにとって純プライベーターとして初のドライバーズ・マニュファクチャラーズタイトル獲得という歴史的快挙を達成する要因となりました。しかし、DMACKのWRC撤退を受け、以降はミシュランタイヤを使用することとなります。
2018年はオット・タナクがMスポーツを離脱したことで、セカンドドライバーからエースドライバーのセバスチャン・オジェをサポートする立場へと変わりました。チームオーダーで順位を譲る場面もありましたが、ポルトガルとカタルーニャで表彰台を獲得しました。
2019年にはオジェの離脱によりチームのトップドライバーに昇格。メキシコで3位表彰台を獲得。コルシカでは優勝目前まで迫りましたが、最終ステージでパンクにより3位に終わりました。その後、ラリーエストニアで負傷し数戦を欠場したものの、母国戦のラリーGBで復帰し5位に入賞しました。最終的にはドライバーズランキング5位でシーズンを終えました。
2020年、エバンスはTOYOTA GAZOO Racingに移籍。再びオジェとチームメイトとなります。スウェーデンでWRC2勝目を挙げ、イギリス人ドライバーとして初の快挙を達成。トルコでも優勝し、ドライバーズランキング首位に立ちました。しかし、最終戦モンツァでのコースアウトにより、惜しくもドライバーズタイトルを逃しました。

TOYOTA GAZOO Racingでの戦い

2021年もTOYOTA GAZOO Racingに所属し、2勝と4度の2位表彰台を獲得。オジェとのチャンピオン争いを最後まで繰り広げましたが、チャンピオン獲得には届きませんでした。
2022年はラリー1規定が導入され、空力依存度の低くなったマシンに苦戦。シーズンを通して安定した成績を残すことができず、未勝利に終わりました。
2023年は、メキシコで3位、クロアチアで優勝と復調の兆しを見せました。しかし、ポルトガルでクラッシュ。その後も表彰台を獲得するなど、安定した成績を残し、最終戦ラリージャパンでは優勝を飾りました。この優勝により、年間3勝という自己最多勝数を記録し、ドライバーズランキング2位でシーズンを終えました。

個性的な人物像

エバンスのドライビングスタイルは、オジェよりもロバンペラに近いと評されています。彼はアクセルとブレーキを強く踏み込むタイプであり、アタック中は前傾姿勢で口を開けてドライブする姿が特徴的です。また、彼のペースノートは、一般的に使われるものとは逆のルールになっており、オンボード映像を見る際には注意が必要です。

未来への展望

2024年には、ロバンペラのスポット参戦により、TOYOTA GAZOO Racingの事実上のエースとして戦います。彼の今後の活躍に期待しましょう。

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