ラーテル

ラーテル（ミツアナグマ）について

ラーテル（学名: Mellivora capensis）は、イタチ科に分類される哺乳類で、本種のみでラーテル属を構成します。別名ミツアナグマとも呼ばれ、蜂蜜を好む生態からこの名が付けられました。

分布

ラーテルは、アフリカ大陸、中東、南アジアにかけて広く分布しています。具体的には、アフガニスタン、インド、イラン、アラブ首長国連邦、イスラエル、エジプト、南アフリカ共和国など、非常に広範囲な地域に生息しています。乾燥地帯を好みますが、森林や湿地にも適応しています。

形態

体長は60〜77cm、尾長は20〜30cm、体重は7〜13kg程度です。背面は灰色で、頭部から背中、尾にかけて白い体毛で覆われています。一方、顔から腹部、四肢にかけては黒い体毛で覆われています。特徴的なのは、その分厚い皮膚で、特に頭部から背中にかけては非常に伸縮性が高く、硬さを併せ持つ装甲のようになっています。これにより、外敵からの攻撃を防ぐことができます。耳介はなく、四肢には大きく発達した鉤爪があります。また、肛門付近には臭腺があり、危険を感じると強い臭いの液体を噴射します。

分類

イタチ科内では、アメリカアナグマに次いで初期に分岐した系統と考えられています。かつてはアフリカ産以外を別種とする説もありましたが、現在では亜種として扱われています。

生態

ラーテルは、主に夜行性で、昼間は木の洞や岩の隙間などで休みます。単独またはつがいで生活し、群れは形成しません。木登りが得意で、発達した前足と爪を使って素早く穴を掘ることもできます。

食性は雑食で、哺乳類、鳥類、果実、昆虫など様々なものを食べます。特に蜂蜜とハチの幼虫を好み、この習性が「ミツアナグマ」という名前の由来となっています。蜂蜜を探す際には、ミツオシエ科の鳥類と共生関係にあります。ミツオシエはラーテルを蜂の巣まで誘導し、ラーテルが巣を壊して蜂蜜やハチの幼虫を食べた後、ミツオシエはそのおこぼれを食べるという共生関係です。

ラーテルは非常にどう猛な性格で知られており、身の危険を感じると大型動物にも攻撃を仕掛けます。その分厚い皮膚はライオンの牙や爪も通さず、コブラなどの毒蛇に対しても耐性を持っています。この恐れ知らずの性格から、「世界一怖いもの知らずの動物」としてギネスブックに登録されています。

人間との関係

一部地域では食用とされたり、薬用として利用されたりすることがあります。一方で、養蜂業者からは害獣とみなされることもあります。生息地の破壊や狩猟などにより、個体数が減少している地域もあります。

ラーテルにちなんだもの

南アフリカ共和国では、ラーテルの名を冠した歩兵戦闘車「ラーテル歩兵戦闘車」が開発されました。また、アメリカのAAC社が開発した小銃「AAC ハニーバジャー」も、ラーテルの英名に由来しています。

まとめ

ラーテルは、そのユニークな生態と恐れ知らずの性格で知られる興味深い動物です。蜂蜜を求めてミツオシエと共生したり、ライオンやコブラにも立ち向かったりする姿は、まさに「世界一怖いもの知らず」の名にふさわしいと言えるでしょう。

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