ラーテル歩兵戦闘車

ラーテル歩兵戦闘車 (Ratel)

ラーテルは、南アフリカ共和国で開発された歩兵戦闘車であり、その名称はアフリカに生息するミツアナグマ（ラーテル）に由来します。この車両は、南アフリカ国防軍が使用していた旧式の装甲車の代替として開発されました。

開発の背景

1960年代、南アフリカはアパルトヘイト政策により国際的な非難を浴び、イギリスやフランスからの武器禁輸措置を受けました。これにより、南アフリカは自国の防衛のために独自の兵器開発を迫られることになります。ラーテルは、このような状況下で1968年に設計が開始され、既存の車両を参考にしながら開発が進められました。そして、ベルギー製のSIBMAS装甲車に類似した形状を持つ車体が1974年に完成し、量産が開始されました。

現在、南アフリカ軍は近代化計画の一環として、ラーテルをフィンランドのパトリアAMVをライセンス生産したバジャーに更新し、ラーテルは退役する予定です。

構造

ラーテルの最大の特徴は、一般的な歩兵戦闘車が採用する履帯式ではなく、6輪の装輪式を採用している点です。これは、南アフリカが主な作戦地域として想定していた地域が比較的平坦であり、泥沼地帯が少なかったため、整備・維持コストが安価で長距離自走が可能な装輪式が選択されました。エンジンは車体後部に配置され、兵員用出入口を確保するために左側にずらして設置されています。運転席は車体中央に配置され、前方と左右には防弾ガラスを覆う装甲板が設置されています。

実戦投入

ラーテルは1974年に南アフリカ軍に初めて実戦投入され、1993年のアパルトヘイト政策廃止まで、アンゴラ侵攻やナミビアのSWAPO掃討作戦に従事しました。また、輸出先のモロッコでも、西サハラにおけるポリサリオ戦線掃討作戦に参加した可能性があります。

バリエーション

ラーテルには、様々な派生型が存在します。

ラーテル20: 基本型であり、20mm機関砲を装備しています。
ラーテル60: AML 60のライセンス生産車両であるエランド装甲車の砲塔を搭載したタイプで、主武装は60mm後装式迫撃砲です。
ラーテル81: 砲塔を撤去し、車体内部に81mm迫撃砲を搭載した自走迫撃砲です。
ラーテル90: AML 90の砲塔を搭載した派生型で、90mm砲を搭載し、火力支援を主任務とします。
ラーテルZT3: ZT3スイフト対戦車ミサイルの3連装ランチャーを搭載した戦車駆逐車です。
ラーテル・コマンド: 指揮統制車であり、砲塔に12.7mm重機関銃を搭載しています。
ラーテル・メンテナンス: 野戦整備用の車両です。
ラーテル・ロジスティクス: 8x8式の輸送用車両ですが、量産はされませんでした。

採用国

南アフリカ共和国
モロッコ
サハラ・アラブ民主共和国
ザンビア
カメルーン
ルワンダ
ガーナ
セネガル
ジブチ
リビア
ヨルダン
イエメン

登場作品

War Thunder: イギリスツリーにミラン対戦車ミサイルを装備したラーテル20、ラーテル90、ラーテルZT3-A2が実装されています。

関連項目

歩兵戦闘車

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