リシュリュー級戦艦

リシュリュー級戦艦

リシュリュー級戦艦は、フランス海軍が1930年代に建造した戦艦で、ワシントン海軍軍縮条約に基づいて設計されたものである。この級は、従来のダンケルク級からの発展形となっており、フランスが直面していたイタリアやドイツとの競争に対抗するために生まれた。

概要

フランス海軍は、戦間期において地中海の戦略的な状況を鑑み、イタリアの新型戦艦建造やドイツのビスマルク級戦艦建造に対抗する必要があった。そこで、ダンケルク級戦艦を基にしたリシュリュー級が設計され、優れた火力と防御力を兼ね備えていることを目指した。

この級は2隻が建造され、主砲塔は2基の4連装型式で、艦前部に集中配置されている。特に、主砲口径は「1935年型 38cm（45口径）砲」に拡大され、火力の強化が図られている。これにより、重量884kgの砲弾を初速785m/秒で発射し、最大射程41,700mを誇る。

外観と船体

リシュリュー級の船体形状は、フランス独特の中央楼型を踏襲しており、艦首は強く傾斜したクリッパー・バウ型に設計されている。全長は247.8m、全幅は33mで、前級よりもさらに強固な構造を持つ。

艦首部には新設計の38cm砲を装備し、艦橋は近代的な塔型になっている。艦橋の頂上には大型の主砲用測距儀が設置されており、精度の高い射撃をサポートする。また、後檣と煙突の機能を統合した「MACK」構造も採用され、機能性が向上している。

主砲と副砲

主砲には新設計の38cm砲が搭載され、俯仰能力や旋回角度も広く確保されている。これに対抗するために、15.2cm副砲も配置され、高角砲として10cm高角砲も搭載され、対空能力を強化している。

1930年代当時の艦船と比較して、リシュリュー級は防御力も格段に向上しており、舷側と甲板の装甲に最大330mmと150mmが施され、爆発物や魚雷への対抗力を備えている。

機関と航行性能

リシュリュー級戦艦の機関は、フランスの伝統であるシフト配置を採用し、重油専焼のインドル・スラ式ボイラーとパーソンズ式ギヤード・タービンを使用している。この組み合わせにより、最大出力は150,000hpに達し、計画速力は30ノットとされた。また、航続性能も非常に優れており、速力10ノットで10,000海里を航行可能という仕様であった。

艦歴

リシュリュー級のネームシップであるリシュリューは、1935年に建造が始まり、続けてジャン・バールが建造されたが、第二次世界大戦勃発により完成が遅れた。リシュリューは、ニューヨークで完工後、自由フランス海軍に加わり、戦闘に参加した。

一方で、ジャン・バールも戦争中にアメリカ軍との交戦を経て、最終的にはフランスに帰還し、限られた状態で完成を果たした。戦後、リシュリュー級戦艦は、フランスが戦艦建造の名を残す重要な存在となった。

同型艦

• - リシュリュー (Richelieu)
• - ジャン・バール (Jean Bart)
• - クレマンソー (Clemenceau)
• - ガスコーニュ (Gascogne) - 未起工

参考文献

• - 「世界の艦船増刊第22集 近代戦艦史」(海人社)
• - 「歴史群像 銘艦STORYリシュリュー」(学研) など

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