リネン

リネンの概要

リネン（英: linen、仏: lin）は、亜麻の繊維を主な原料とする織物の総称であり、その特性は広義の麻繊維に含まれます。リネンは特有のカラッとした風合いがあり、使用感の良さから古くから重宝されてきました。使われてきた地域としては、中近東があり、肌着の素材やエジプトのミイラを包む布など、重要な役割を果たしてきた歴史があります。現代では、ホテルや病院でのシーツや枕カバー、テーブルクロスなどの布製品を指して「リネン」と呼ぶことが多いですが、使用される素材は必ずしもリネンであるとは限りません。

特徴と用途

一般的にリネンは薄地で、さらりとした手触りと丈夫さ、優れた吸湿性がある織物として知られており、光沢感も特徴の一つです。色合いには白や淡い黄色、「麦わら色」や「象牙色」と描写されるものがあり、特に夏物の衣服、敷布、テーブルクロス、ハンカチ、レース地など様々なアイテムに利用されます。また、厚手のリネンは帆布やキャンバスとしても活用されます。

日本におけるリネンの名称

日本では「麻」と称されるリネン製品が多数流通しています。元々「麻」という用語は大麻（ヘンプ）や苧麻（からむし）を指していましたが、近年では海外から輸入された亜麻なども含めて広義に「麻」と呼ばれるようになりました。現代日本での麻製品の多くは亜麻から作られていますが、法律上、家庭用品品質表示法においてはヘンプは「麻」に含まれていません。

リネンの歴史

リネンの歴史は古代に遡ります。紀元前8000年のティグリス川・ユーフラテス川の周辺では亜麻が自生していたとされ、紀元前3500年の古代エジプトでは「リネン」が重要な交易品となっていました。炭素年代測定によって確認された最古のリネン製品は、エジプト初期王朝時代に遡り、物質文化の発展を窺わせます。

古代中近東では、リネンは肌着としてよく利用され、エジプトにおいてはミイラを包む布としても重用されました。聖書にもイエス・キリストの遺体を覆った聖骸布がリネンであったことが記されています。また、現代のヒンドゥー教徒は亜麻を使って遺骸を包み、聖なるガンジス川へと流す風習があります。

古代ギリシャやローマ時代、純白のリネンは高く評価され、多くの著名な文献にその重要性が記されています。18世紀には生産量が増加し、イギリスでは重要な素材の一つとして広がりを見せました。カール・マルクスやJ・S・ミルなどの経済学名著においてもリネンはしばしば取引の例として引き合いに出され、日本でも明治時代に北海道で広く栽培されるようになりましたが、1960年代以降はその生産は衰退しました。

このように、リネンはその長い歴史において多様な用途で利用され、文化的背景も豊かな織物です。これからもその特性と美しさから、多くの場面で愛用され続けることでしょう。

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