ルガンスク人民共和国

ルガンスク人民共和国とは

ルガンスク人民共和国（LPR）は、ウクライナ東部のルハーンシク州全域を実効支配していた事実上の独立国家、あるいは武装勢力です。2014年にウクライナからの独立を一方的に宣言し、ルハーンシク州最大の都市であるルガンスクを首都としていました。人口は約150万人と推定されています。LPRは憲法上、民主的な立憲国家を標榜していましたが、その実態は複雑でした。

成立の背景

2014年、ウクライナではマイダン革命が起こり、親ロシア派の住民が多い地域では反乱が相次ぎました。その中で、LPRはハリコフ人民共和国、ドネツク人民共和国などと共に独立を宣言しました。当初、ロシアを含む多くの国はLPRを承認しませんでしたが、2022年にはロシア、シリア、北朝鮮が国家承認を行いました。

ウクライナとの関係

ウクライナ政府は、LPRの支配地域を「一時的な占領地」とみなし、LPRの「政府」をロシア連邦の占領政権と位置づけています。ウクライナの法律では、LPRの地域は「一時的な占領地」とされ、その統治機構はロシアの占領政権とみなされています。

ロシアへの併合と消滅

2022年9月下旬、ロシア占領地域でロシアへの併合を問う住民投票が実施され、賛成多数となりました。これを受けて、ロシアのプーチン大統領は9月30日に併合を宣言し、編入条約に調印しました。その後、ロシア議会が条約を批准し、関連法案が成立したことにより、LPRはロシアに吸収され消滅しました。しかし、ウクライナや西側諸国は、この住民投票や併合宣言の有効性を認めていません。

名称について

ロシア語での正式名称は「Луганская Народная Республика」（Luganskaya Narodnaya Respublika）で、略称は「ЛНР」（LNR）です。ウクライナ語での表記は「Луганська Народна Республіка」で、略称はロシア語と同じです。英語では、ウクライナ語の発音に基づいた「Luhansk People's Republic」が一般的ですが、ロシア語の発音に基づいた「Lugansk People’s Republic」も用いられます。日本語では、ロシア語発音に基づく「ルガンスク」表記が主流ですが、「ルハンシク」や「ルハンスク」も一部で見られます。

歴史

建国と初期の動き

2014年 4月27日、親ロシア派住民が国家安全保障ビルの前で「建国」を宣言しました。5月11日には住民投票を実施し、翌日に独立を宣言しました。5月24日には、ドネツク人民共和国と共に連邦国家「ノヴォロシア人民共和国連邦」を結成しましたが、2015年にこの計画は凍結されました。

ロシアとの関係

NATOとウクライナは、ロシアが反政府勢力に軍事的な支援を行っていると主張していましたが、ロシアはこれを否定していました。また、2014年9月には、LPRを含む関係者間でミンスク議定書が締結されましたが、その合意内容は十分に実施されませんでした。

内政の混乱とロシアの承認

2016年にはLPR指導者の乗用車が爆破される事件が発生し、2017年には首長と内務大臣の対立が表面化し、混乱が生じました。2022年 2月21日、ロシアは国連加盟国として初めてLPRを正式に承認しました。その後、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始すると、LPRはロシア軍に戦力を提供し、ドンバス方面での作戦に協力しました。

ロシアによる占領と併合

2022年6月には、ロシア軍とLPR軍がセベロドネツクを占領し、7月にはルハーンシク州全域を制圧しました。9月にはロシアへの併合を問う住民投票が行われ、賛成多数となり、ロシアに併合されました。この結果、LPRは消滅しましたが、国際社会ではその正当性が認められていません。

地理

LPRが支配していた地域の面積は、2014年時点で約8,352.6平方キロメートルと推定され、ルハーンシク州のおよそ半分程度を占めていました。2022年7月には全土を制圧しました。

政治

LPRは、三権分立の共和制国家を自称していました。国家元首は「首長」と呼ばれ、立法府は一院制の人民評議会で、定員は50名でした。

外交

LPRは、同じく独立を宣言したドネツク人民共和国とは相互承認の関係にあり、ノヴォロシア人民共和国連邦を構成していました。しかし、国際連合加盟国からの国家承認はロシア、シリア、北朝鮮の3カ国にとどまっていました。南オセチアやアブハジアといった事実上の独立地域からも承認を受けていました。

軍事

LPRは独自の軍隊を持っており、ロシア軍の支援を受けながらウクライナ軍と戦闘を行っていました。

経済

LPRではロシア・ルーブルが通貨として使用されていました。域内の郵便は、LPRが設立した郵便局が担っていました。

人権

LPRでは人権状況に関する懸念が指摘されており、報道の自由や集会の自由が制限されているとの報告があります。

交通

LPRの支配地域にはルガンスク国際空港がありましたが、戦闘により使用不能となっていました。鉄道はウクライナ鉄道から切り離され、ドネツク人民共和国との間で運行されていました。また、ウクライナやロシアを結ぶバス路線も運行されていました。ウクライナ政府支配地域からの外国人の入境は、特別な許可証を持つ報道関係者などに限られていました。

住民

2020年1月1日時点の人口は144万3897人で、ルハーンシク州全体の約6割に相当していました。当初、公用語はロシア語とウクライナ語でしたが、2020年6月3日にウクライナ語が公用語から外されました。

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