ルスティケロ・ダ・ピサ

ルスティケロ・ダ・ピサ：謎に包まれた13世紀の作家

13世紀後半、イタリアのピサで活躍したルスティケロ・ダ・ピサは、現在でも多くの謎を残す歴史上の人物です。彼の名は、東洋の記述を記した『東方見聞録』(Il Milione または La Description du Monde)と、アーサー王伝説を題材とした作品群を通して知られています。しかしながら、これらの作品への関与や、その生涯自体に、いくつかの謎と論争がつきまといます。

マルコ・ポーロとの出会い：獄中での共同作業

ルスティケロは、1284年にピサとジェノヴァ共和国間の戦争、メロリアの戦いにおいて捕虜となりました。獄中で、後に有名な探検家となるマルコ・ポーロと出会います。この出会いが、ルスティケロの生涯における大きな転換点となりました。マルコ・ポーロの東方への旅の体験談をもとに、ルスティケロは『東方見聞録』を共同で執筆したのです。この作品は、中世ヨーロッパの人々に東洋の世界観を広める上で大きな役割を果たしました。しかしながら、ルスティケロが実際にどの程度の内容に携わったのか、単なる筆記者だったのか、それとも共同編集者として積極的に内容に介入したのか、現在でも議論が続いています。

アーサー王伝説への貢献

『東方見聞録』以外にも、ルスティケロはアーサー王物語に関する著作を残したとされています。具体的には、フランス語で書かれたアーサー王や円卓の騎士、聖杯伝説などを描いた作品です。エドワード1世の廷臣として仕えていた時期に、王室所蔵のアーサー王伝説に基づいて執筆されたと推測されています。ただし、この著作と『東方見聞録』に関わったルスティケロが同一人物であるかどうかについても、明確な結論は出ていません。複数のルスティケロが存在した可能性も指摘されており、歴史研究家の間では議論の的となっています。

歴史的評価と謎

ルスティケロ・ダ・ピサは、歴史上、明確な人物像が掴みにくい人物の一人です。複数の重要な著作に関わったとされる一方、その生涯や、それぞれの作品への関与度合いは不明な点が多く残されています。『東方見聞録』において、彼は単なる筆記者だったのか、それともマルコ・ポーロの体験を元に独自の解釈を加え、作品を完成に導いた共作者だったのか、彼の役割を正確に評価することは困難です。

また、アーサー王物語の著作に関わった人物が、東方見聞録のルスティケロと同一人物なのか、もしくは別人なのかという点も、歴史研究において重要な論点となっています。今後、新たな史料の発見や研究の進展によって、この謎が解き明かされる可能性も期待されます。彼の残した作品は、中世ヨーロッパにおける文化交流や世界観を知る上で貴重な資料であり、謎多き人物像は、現在でも研究者たちの興味を引きつけ続けています。ルスティケロ・ダ・ピサの生涯と業績は、これからも多くの謎とともに、歴史研究において重要なテーマとして扱われていくことでしょう。

ルスティケロが登場する作品

ルスティケロは、NHK Eテレの教育番組『ねこねこ日本史』にも登場しています。奥州藤原氏の回で、辻美優さんが声を担当しています。これは、ルスティケロという人物が、現代の日本のアニメーション作品にも影響を与えていることを示す興味深い事例と言えるでしょう。

もう一度検索