ルネ・ラルー

ルネ・ラルー：幻想と社会風刺のアニメーション作家

ルネ・ラルー（René Laloux, 1929年7月13日 - 2004年3月14日）は、フランス・パリ出身のアニメーション作家、映像作家、映画監督です。彼は、シュールで幻想的なSF作品を多く手がけ、国際的に高い評価を得ました。特に、長編アニメーション『ファンタスティック・プラネット』は、アニメーション作品として初めてカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、その名を世界に知らしめました。

生涯とキャリア

絵画学校で美術を学んだ後、広告業界でのキャリアを経て、ラルーはアニメーションの世界へ足を踏み入れます。1955年から4年間、精神科病院で芸術療法に携わった経験は、彼の作風に大きな影響を与えました。1960年には、患者たちが描いた絵を基に制作された短編アニメーション『猿の牙』を発表。この作品は、フランスのエミール・コール賞を受賞し、ラルーの才能を世に知らしめるきっかけとなりました。

審査員の一人であった画家ミシェル・フォロンの紹介で、ローラン・トポールと出会い、共同で『死んだ時間』（1964年）と『かたつむり』（1965年）の2つの短編アニメーションを制作。これらの作品で、ラルーは独特な世界観と映像表現を確立していきます。

1973年には、ステファン・ウルによるSF小説『オム族がいっぱい』を原作とした初の長編アニメーション『ファンタスティック・プラネット』を制作。この作品は、異質な惑星を舞台にした独創的な物語と、その世界観を際立たせる映像美で、世界中の観客を魅了しました。カンヌ国際映画祭での受賞は、アニメーション作品が芸術として認められる上で、大きな転換点となりました。

その後も、ラルーはメビウス（ジャン・ジロー）と組んで『時の支配者』（1982年）、フィリップ・カザと組んで『ガンダーラ』（1987年）といった長編作品を手がけ、その創作意欲は衰えることを知りませんでした。1996年からは、国立コミック映像センターのデジタルイメージ研究所のディレクターを務め、後進の育成にも尽力。1998年には、広島国際アニメーションフェスティバルで国際審査委員を務めるなど、国際的なアニメーション界の発展にも貢献しました。

2004年3月14日、心臓発作により74歳でその生涯を閉じました。

作品の特徴

ラルーの作品は、そのシュールで幻想的な世界観が最大の特徴です。寓話的な物語を通して、人間の愚かさや社会に対する風刺を巧みに表現しています。また、アニメーションの手法も非常にユニークで、切り絵やパステル画のようなタッチが、彼の作品に独特の魅力を与えています。彼の作品は、単なるエンターテイメントではなく、観る者に深く考えさせる力を持っています。

主な作品

短編アニメーション

『猿の牙』（1960年）
『死んだ時間』（1964年）
『かたつむり』（1965年）
『ワン・フォはいかにして助けられたか』（1988年）

長編アニメーション

『ファンタスティック・プラネット』（1973年）
『時の支配者』（1982年）
『ガンダーラ』（1987年）

関連作品

ラルーの作品は、DVDやBlu-rayで発売されており、その独特な世界観に触れることができます。

『ファンタスティック・プラネット』
『時の支配者』
『ガンダーラ』
『ルネ・ラルー傑作短編集』（『かたつむり』、『ワン・フォはいかにして助けられたか』を収録）
『ルネ・ラルー コンプリートDVD‐BOX』（上記作品を全て収録）

参考文献

昼間行雄、権藤俊司、編集部編『ユーロ・アニメーション』フィルムアート社、2002年
小野耕世『世界のアニメーション作家たち』人文書院、2006年

関連項目

ラ・ボルド病院
宮崎駿

外部リンク

ルネ・ラルー - KINENOTE
ルネ・ラルー - allcinema
* ルネ・ラルー - IMDb（英語）


ルネ・ラルーは、アニメーションという表現を通して、社会や人間に対する深い洞察を示し、観る者の心に深く残る作品を作り続けました。彼の作品は、今もなお、世界中の人々に愛され、その影響力は計り知れません。

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