丈部黒当

丈部 黒当について

丈部 黒当（はせつかべ の くろまさ）は、奈良時代に活動した防人であり、その生涯に関する詳細な記録は残っていません。彼の出身地は遠江国佐野郡、現在の静岡県掛川市付近とされています。丈部という名前は、東国に広く分布していた軍事的な部民を意味し、当時の日本の防衛体系において重要な役割を果たしていました。

防人としての活動

黒当は天平勝宝7歳（755年）2月に、筑紫へ防人として派遣されました。防人とは、外敵から国家を守るために配置された兵士であり、特に国境や要所に駐屯する役割を担っていました。彼は古代日本の防衛体制の一端を担った人物と思われます。この時期、日本は内部の争いや外部からの侵略の脅威に直面していたため、彼の任務は非常に重要でした。

万葉集への詠み込み

丈部黒当は、詩人としても知られており、彼の作品は『万葉集』に収められています。この詩は、

父母も花にもがもや草枕旅は行くとも捧ごてゆかむ（万葉集20-4325）

というものです。この詩には、故郷を離れ、出発する際の思いが込められており、親への思いや旅の不安が表現されています。また、当時の人々がどのように親子の情や故郷に対する思いを詠んでいたのかを知る貴重な資料です。

文献や資料

黒当に関する情報は、いくつかの歴史的な文献に記載されています。中西進訳の『万葉集 全訳注原文付』や、坂本太郎・平野邦雄監修の『日本古代氏族人名辞典』、さらには佐伯有清編の『日本古代氏族事典』などが挙げられます。これらの資料は、古代日本の文化や社会、文学に対する理解を深めるのに役立ちます。

関連項目

丈部黒当のような防人の歌は、日本古代の防人歌として分類されています。防人歌は、戦の不安や故郷への思いを表現する重要な文学形式であり、当時の防人たちの感情を知る手掛かりとなっています。彼の詩に描かれた感情は現代の私たちにも共鳴し、古代の人々の心の動きに思いを馳せることができます。

丈部黒当の人生は、多くの詳細には満たされていませんが、彼の詩を通じて彼がどのような人であったのか、また時代背景を学ぶことができる貴重な機会を提供しています。

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