三和酒類

三和酒類株式会社：伝統と革新が息づく酒造りの世界

概要

三和酒類株式会社は、大分県宇佐市に本社を構える、総合酒類メーカーです。特に麦焼酎「いいちこ」は、「下町のナポレオン」という愛称で広く親しまれています。焼酎のほかにも、清酒、ワイン、ブランデー、リキュールなど、多岐にわたる酒類を製造しています。2021年時点での課税移出数量は、国内単式蒸留焼酎メーカーで第2位を誇ります。2009年の時点では、焼酎以外の酒類メーカーを含めても第5位にランクインしており、その生産規模の大きさが窺えます。

大量生産を行う一方で、同社は品質にも強いこだわりを持っています。醸造研究所内に設けられた「虚空乃蔵」では、常圧蒸留などの伝統的な製法や厳選された原材料を用いた焼酎の研究が行われており、限定販売される『和香牡丹　純米酒』などは、その成果の一例です。

独自の販売戦略も特徴的です。支店や営業所を持たず、商社や問屋に販売を委託することで、地方企業ながら全国規模での販売網を確立しています。

沿革

三和酒類の歴史は、1958年の設立に遡ります。以下に主な沿革をまとめました。

1958年
9月5日：三和酒類株式会社設立。大分県宇佐郡駅川町に本社を設置。
10月：清酒蔵置所設置許可。「和香牡丹」を統一銘柄とする。
1959年
9月：西酒造場が参加。
1961年
10月：本社を大分県宇佐郡駅川町に移転。
1972年
10月：赤松本家酒造など4社が企業合同。
1975年
12月：本社を大分県宇佐市に移転。
1979年
2月：麦焼酎「いいちこ」発売。
1983年
11月：山本工場開設。
1985年
11月：大分合同新聞文化省（特別功労賞）受賞。
1986年
1月：中小企業研究センター賞受賞。
10月：『季刊iichiko』創刊、TVCM開始。
1987年
5月：精製場、ボトリングファクトリー新設。
1988年
3月：焼酎醸造場新設。
1989年
4月：三和研究所、日本酒醸造場、アジムワイナリー新設。
8月：本社を宇佐市に移転。
1990年
6月：本社社屋完成。
1991年
3月：新排水処理場完成。
8月：第3ボトリングファクトリー新設。
1992年
9月：拝田工場を新設。
1993年
3月：JMA総合マーケティング優秀賞受賞。
1995年
9月：第3焼酎醸造場新設。
1996年
11月：花のまちづくりコンクール「農産園芸局長賞」受賞。
1997年
2月：九州通産局長賞受賞
6月：第3貯蔵庫新設。
2000年
10月：FW21棟（パック製品専用ライン及び社員食堂）新設。
2001年
10月：安心院葡萄酒工房操業開始。
2002年
4月：日田蒸留所操業開始。
2003年
10月：安心院葡萄酒工房が九州経済産業大臣賞を受賞。
2004年
2月：九州産業局長賞（電気部門）受賞。
4月：いいちこ日田蒸留所一般公開開始。
8月：いいちこ日田蒸留所 第2生産棟 新設。
2005年
3月：デザイン・エクセレント・カンパニー賞受賞。
2006年
10月：安心院葡萄酒工房が経済産業大臣賞を受賞。
10月：環境大臣賞受賞。
2009年
4月：拝田グリーンバイオ事業所新設。
2011年
3月：あじむの丘農園竣工。
2013年
9月：iichiko USA設立。
11月：本社工場、日田蒸留所「FSSC22000:version3,2013」認証取得。
2022年
5月：旧本社跡地に「辛島 虚空乃蔵」をオープン。

生産施設

本社工場：大分県宇佐市
安心院葡萄酒工房：大分県宇佐市安心院町
日田蒸留所：大分県日田市（元ニッカウヰスキー九州工場）

主力商品

焼酎
いいちこ（25度、20度）
いいちこフラスコボトル（30度）
いいちこスペシャル（30度）
いいちこシルエット（25度）
いいちこパーソン（25度）
いいちこスーパー（25度）
いいちこ民陶くろびん（25度）
いいちこ深薫（25度）
いいちこ日田蒸留所 長期熟成貯蔵酒（40度）
いいちこ日田蒸留所 全麹減圧蒸留原酒（44度）
いいちこ日田蒸留所 全麹常圧蒸留原酒（44度）
西の星（20度）
清酒
和香牡丹
福貴野
大吟醸 虚空蔵
ワイン
安心院ワイン
卑弥呼
リキュール
iichiko BAR
清涼飲料
虚空蔵麦酢（各種フレーバー）
黒ギャバ
そふとくりーむ（安心院葡萄酒工房院限定、ブランデー風味、バニラ風味）

受賞歴

三和酒類は、数々の賞を受賞しています。特に「安心院葡萄酒工房」は、日本ワイナリーアワードで5年連続五つ星を獲得しており、その品質の高さが評価されています。

日本ワイナリーアワード
2019年～2023年：五つ星獲得
日本ワインコンクール
2007年：金賞、最優秀カテゴリー賞「安心院葡萄酒工房 シャルドネ 2006」
2018年：金賞、部門最高賞「安心院ワイン シャルドネ リザーブ 2016」
2022年：金賞「安心院ワイン アルバリーニョ」

広告戦略

「いいちこ」のブランドイメージを確立した広告戦略は特筆に値します。1984年からクリエーター河北秀也氏、写真家浅井慎平氏を起用し、本格焼酎のイメージを刷新。広大な自然の中に佇むボトルを印象的に描いたポスターは、多くの人の記憶に残っています。

テレビCMでは、ビリーバンバンが歌うCMソングが長年使用されており、静かな風景と音楽が織りなす独特の世界観が特徴です。また、2009年からは「いいちこ日田全麹」のCMが開始され、従来のCMとは対照的に、和風の世界観が表現されています。

メセナ

三和酒類は、メセナ活動にも積極的に取り組んでいます。1986年から発行されている学術文化誌『季刊iichiko』は、メセナ大賞企画賞を受賞。また、別府アルゲリッチ音楽祭などの文化イベントや、大分トリニータ、大分ヒートデビルズといった地元スポーツチームへの協賛も行っています。

スポンサー番組

過去には、フジテレビ、TBS、テレビ朝日などで数多くの番組にスポンサーとして名を連ねています。

著名な出身者

声優の田村ゆかりさんが、デビュー前に約1年間勤務していたことでも知られています。

まとめ

三和酒類株式会社は、伝統的な酒造りの技術を継承しつつ、革新的な取り組みにも挑戦し続けている企業です。「いいちこ」をはじめとする数々の名品は、その技術と情熱の結晶と言えるでしょう。また、地域社会への貢献や文化活動の支援にも積極的に取り組む姿勢は、多くの企業にとって模範となる存在です。

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