三遊亭歌奴

四代目 三遊亭 歌奴

三遊亭歌奴（さんゆうてい うたやっこ）は、落語家が代々受け継ぐ名跡の一つです。現在この名を名乗っているのが四代目にあたる落語家で、本稿ではその人物について詳細に記述します。四代目三遊亭歌奴は、1977年3月19日に大分県大分市に生を受けました。本名は柴田陽介といい、現在は東京を活動の拠点としています。彼の高座において使用される出囃子は「供奴」、定紋は「片喰」です。日本の落語界を代表する名跡の一つ、三遊亭圓歌の門下で修行を積み、若手時代からその実力が広く認められてきました。

彼の落語家への道は、故郷である大分での学生時代にその萌芽を見せます。大分大学教育学部附属小学校、そして同中学校に通っていた頃から、クラブ活動として落語研究会に所属し、早くから落語に親しんでいました。大分県立大分商業高等学校へ進学後も落語への情熱は衰えず、仲間と共に「豊の国落語会」を結成。この会を通じて、県内の高齢者施設や地域のイベント、敬老会などで積極的に落語会を開催し、観客の前で演じる貴重な経験を積みました。また、高校在学中から地元のケーブルテレビやラジオ番組にレギュラー出演するなど、学生ながらにメディアでの活動も行っており、その才能は地元で早くから注目されていました。

高校卒業を間近に控えた頃、同級生たちが進学や就職の道を選ぶ中、柴田陽介青年が心に決めたのは、落語家として生きる道でした。彼は強い意志を持って、当時の落語界を代表する大御所、三代目三遊亭圓歌への弟子入りを志願します。その熱意と才能が認められ、高校卒業と同時にあたる1995年3月、念願の入門を果たしました。入門当時の様子は、地元のOBSテレビの番組で取り上げられ、九州地方で広く紹介されるなど、地元が生んだ落語家として大きな期待が寄せられました。師匠から初めて与えられた名前は、前座名の「歌きち」。入門からわずか3ヶ月後の同年6月には、東京の落語定席である新宿末広亭で、落語家としての第一歩となる初高座を踏みました。

前座としての厳しい修行期間を経て、1999年5月には二ツ目に昇進。これを機に、名前を「三遊亭歌彦」と改めます。二ツ目時代は、彼が落語家としての力量を大きく伸ばし、その実力が対外的にも高く評価されるようになった重要な時期です。若手落語家の登竜門とされる様々な競演会において、次々と輝かしい成績を収めました。特に2002年には、東京・北区で開催される「北とぴあ若手落語家競演会」で、最も権威ある北とぴあ大賞を受賞。さらに2008年には、「さがみはら若手落語家選手権」でも優勝を飾り、実力派としての地位を揺るぎないものとしました。

そして、二ツ目として十分な実績を積んだ後、2008年9月21日、真打への昇進が決定します。これは落語家にとって最大の目標であり、大きな栄誉です。この真打昇進の機会に、彼は「三遊亭歌奴」の名跡を四代目として襲名しました。これは、彼の師匠である三代目圓歌のさらに師匠にあたる人物が名乗っていた由緒ある名前であり、その重みを引き継ぐこととなりました。真打昇進後もその活躍は続き、2010年には「彩の国落語大賞」を受賞するなど、現在も円熟した芸で多くの聴衆を魅了しています。

四代目三遊亭歌奴の演じる落語は、古典落語を中心に据えつつも、新しい創作落語にも意欲的に挑戦しています。古典では、政談噺や相撲噺など、男性的な力強さやスケール感が求められる演目を得意とすると評されることもあります。高座での活動にとどまらず、その活動の幅は広がっています。2020年にはインターネットテレビの『ABEMA寄席』に出演し、多くの視聴者にその芸を届けました。また、2022年に公開された林家しん平監督の映画『二つ目物語』では、おでん屋の店主役として俳優としても出演するなど、多彩な才能を見せています。

芸の継承という面では、師匠である三代目三遊亭圓歌から学んだ教えを守り、後進の指導にもあたっています。現在、彼の門下からは、二ツ目の三遊亭歌彦、そして前座の三遊亭歌きちといった弟子たちが育っています。故郷大分で芽生えた落語への情熱を胸に、着実に芸の階段を上り、真打として第一線で活躍を続ける四代目三遊亭歌奴。今後のさらなる活躍から目が離せません。

芸歴

1995年3月 - 三代目三遊亭圓歌に入門、前座名「歌きち」。
1999年5月 - 二ツ目昇進、「三遊亭歌彦」に改名。
2008年9月 - 真打昇進、「四代目三遊亭歌奴」を襲名。

出囃子

満州娘（二ツ目時代、1999年 - 2008年）
* 供奴（真打昇進以降、2008年 - 現在）

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