不退寺

不退寺（ふたいじ）

不退寺は、奈良県奈良市法蓮町に位置する真言律宗の寺院です。山号は金龍山であり、本尊は聖観音（業平観音とも称されます）です。正式には不退転法輪寺と呼ばれています。

寺院の概要

この寺院は、仁明天皇の勅願を受け、平城天皇の萱の御所跡に在原業平が開基したと言われています。この由緒ある背景から不退寺は「業平寺」とも呼ばれることがあります。また、寺は平城天皇の第一皇子である阿保親王の菩提を弔うための場所でもあります。

奈良市街の北部にあり、南側には関西本線が斜めに通過しています。寺院の境内には四季折々の花々が咲き、特にレンギョウ、椿、カキツバタ、菊などが訪れる人々の目を楽しませています。晩秋には美しい紅葉やナンテンも見ることができます。

寺院の歴史

近世の地誌によると、不退寺は大同4年（809年）に平城天皇が譲位後に隠棲した場所として創建されました。そこには彼の皇子である阿保親王、さらにはその5男である在原業平が住んでいたとされています。業平は伊勢神宮に参詣した際に神勅を受け、これを契機に仁明天皇の詔を受けて、承和14年（847年）に萱の御所を寺院に改め、「不退転法輪寺」と名付けられました。業平は自身で聖観音像を刻み、阿保親王のための菩提所として造営しました。

創建当初から奈良時代には、寺院近くから平安時代前期の古瓦や木簡が出土しており、寺の歴史はその時代まで遡ることが認められます。確実な記録としては、貞観2年（860年）に真如親王が田地を不退寺に施入したという記載があり、これによって平城天皇との関係が明らかになります。

後、平安時代末期には南都焼討で諸堂が炎上し、その後鎌倉時代になって西大寺の興正菩薩叡尊によって再興されました。中世から近世にかけては西大寺及び興福寺一乗院の末寺とされ、複雑な支配を受けることとなりました。この時期には浄名院、不動院、長老坊という塔頭も存在していました。

江戸時代になり、寺領が江戸幕府により安堵され、七堂伽藍が整えられましたが、やがて衰退が始まり、塔頭も廃絶していきました。幕末からの数年間は無住となり、西大寺の住職が兼務していくこととなります。

境内の見どころ

不退寺の境内には多くの重要文化財が存在します。例えば、本堂は南北朝時代から室町時代前期に建立されたもので、独特の和様風建築です。また、多宝塔は鎌倉時代に建てられたもので、現存する最古の建物として貴重な存在です。

さらに、南門（南大門）も重要文化財で、鎌倉時代末期に建立された切妻造の四脚門です。これらの建造物が不退寺の文化的価値を高めています。

本堂には木造聖観音立像が安置されており、これは在原業平の作とされているものですが、実際には平安時代中期の作品と見なされています。さらに、木造五大明王像も本堂に安置されていますが、その作風が異なり、穏やかな表情で制作されていることが特徴です。

アクセス

不退寺へは近鉄新大宮駅から約1km（徒歩13分）でアクセスできます。また、JR奈良駅や近鉄奈良駅から奈良交通バスを利用することも可能です。バス停「一条高校前（不退寺口）」からは徒歩7分です。拝観時間は午前9時から午後5時まで。

十分な歴史と美しい景観を備える不退寺は、訪れる人々に深い感動を与える場所です。

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