南都焼討

南都焼討（なんとやきうち）

南都焼討は、治承4年12月28日（1181年1月15日）に発生した歴史的事件で、平氏政権の命令により、平重衡率いる平氏軍が奈良の著名な仏教寺院、特に東大寺と興福寺を焦土とした。この行動は、反平氏的な庶民や有力寺社の勢力を鎮圧することを目的としていました。

背景

事件は平治の乱後に始まり、特に大和国が平清盛の知行国となった際、彼が南都の寺院の特権を無視し、全国での検断を強行したことから始まります。これに対して、南都の寺院は強く反発し、特に東大寺と興福寺は、歴代天皇の信仰を背景に、大衆の支持を受けながら平氏への抵抗を試みました。そうした中、治承3年の政変が起こり、平清盛の影響力が強まるにつれて、寺院勢力はますます危機感を募らせていきました。

以仁王の挙兵以後、南都の僧侶たちは平氏に対抗するための動きを本格化させましたが、これが鎮圧される結果になります。一方、平氏は南都の寺院に対して厳しい処分を行うことで、更なる緊張をもたらしました。特に、平重衡率いる軍が園城寺を攻撃したことを契機に、興福寺もターゲットとされたのです。

経過

南都への攻軍が開始されたのは治承4年12月25日、平清盛の指導の下、息子の重衡を総大将にして数万の兵を送りました。南都の大衆も『城郭』を築いて迎え撃ちますが、平氏軍は諸国間の連携を経ても決着には至りませんでした。12月28日、ついに平氏軍は防衛線を突破し、熾烈な戦闘が始まりましたが、両軍の妥協点は見つからず、夜に空中で火を放たれることとなります。

この火災は大惨事を引き起こし、興福寺や東大寺の重要な建物が燃え尽くされる結果になりました。特に東大寺の大仏も甚大な被害を受け、頭部と手が落ちるほどに焼損しました。この火の影響は広範囲に及び、奈良市の多くの地域が炎に飲まれました。

火災の被害者は多く、平家物語によれば、火災の中で約3,500人が犠牲になったと言われています。生き残った僧侶や住民たちは、逃げることを余儀なくされたのです。これを受けて、平重衡は兵を引き上げ、帰京しましたが、その際、南都大衆の首級は処罰されることなく捨てられる運命となりました。

戦後の影響

年が明けると、清盛は南都の寺院の所領を没収し、再び平氏の軍を派遣して大衆の掃討を試みました。しかし、この年に高倉上皇が崩御し、清盛も死去することから、平氏政権の運命は急転します。新たに政権を継承した平宗盛は、東大寺と興福寺への処遇を撤回しました。

その結果、両寺院の復興が進むこととなり、東大寺は重源を中心に再建が始まり、大仏の修復が行われます。また、興福寺でも再建事業が急がれ、長い間続く復興の過程が始まりました。

この一連の事件は、奈良の町や文化に深刻な影響を及ぼし、寺院再建に向けた尽力や、地域社会の構造が変化する大きな契機となりました。さらに興福寺や東大寺の再建は、奈良の信仰や文化的基盤の復活に寄与し、その後の歴史にも大きな足跡を残すことになります。

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