叡尊

叡尊の生涯と業績

叡尊（えいそん、またはえいぞん）は、鎌倉時代中期に生きた著名な僧侶であり、真言律宗の創始者として知られています。彼の本名は思円（しえん）であり、諡号は興正菩薩（こうしょうぼさつ）です。叡尊は興福寺の学僧・慶玄の子供として奈良県の大和国添上郡の箕田里にて生まれました。彼は鎌倉仏教の代表的な人物の一人であり、衰退していた戒律を蘇らせ、西大寺を再興した業績で広く認識されています。

生涯の年譜

叡尊の出家は、建保5年（1217年）のことです。この年、彼は醍醐寺の阿闍梨である叡賢に師事して仏道の修行を始めました。その後の元仁元年（1224年）、高野山に入り、真言密教を学ぶことになります。彼の戒律に対する志向は、嘉禎元年（1235年）に西大寺の持斎僧となり、『四分律行事鈔』を学ぶことから始まりました。

また、嘉禎2年（1236年）には、戒律を重んじる仲間と共に東大寺で自誓受戒を行います。しかし、西大寺が衰亡の危機にあったため、彼は海龍王寺に移りました。しかし、その後持戒に関する対立を経て西大寺に戻り、その復興に尽力しました。

叡尊は仁治元年（1240年）から西大寺において忍性の文殊菩薩信仰の影響を受け、非人への斎戒授与などを行いました。特に文殊供養を通して多くの人々に信仰を広め、地域社会における慈善活動に従事しました。彼の活動は社会的支援に留まらず、教育や宗教活動にも及びました。

叡尊はまた、多くの授戒を行い、特に女性や貧者、ハンセン病患者といった社会的弱者への救済にも力を注ぎました。このような活動の結果、彼のもとに集う信者は非常に多くなり、社会的に幅広い信頼を受けるようになりました。叡尊の教えは、「興法利生」を掲げ、全国で10万人近くに戒律を授けました。彼が設立した西大寺の末寺は、一時1650を超えるまでに成長しました。

鎌倉幕府との関わり

叡尊が60歳の際、弘長2年（1262年）には鎌倉幕府の執権である北条時頼から招かれる形で鎌倉に下ると、戒を広く授け、律についての講義も行いました。この時の様子は、弟子である性海が記録した『関東往還記』に記されています。叡尊は国分寺や法華寺の再建にも取り組み、尼への授戒を復活させるなど、多岐にわたる活動を展開しました。

晩年とその後の影響

晩年、叡尊は弘安2年（1279年）に亀山上皇を始めとする公家に授戒し、全国的にその名を馳せました。彼の慈善活動と教化活動は後の律宗に大きな影響を与え、彼が教育した弟子たちは各地で活躍しました。

叡尊は正嘉2年（1300年）に、伏見上皇の院宣により興正菩薩の尊号が贈られ、彼の影響力は歴史的にも評価されています。彼の業績は戒律の復興だけでなく、慈善活動や民衆への布教活動に及び、現代の仏教界においてもなお多くの教訓を与えています。叡尊の生涯は、仏教の理念を広めるとともに、多くの人々の支えとなったのでした。

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