不逮捕特権

不逮捕特権とは

不逮捕特権（ふたいほとっけん）とは、日本国憲法において国会議員が会期中に逮捕されない特権を指します。この権利は特に国会議員の活動や両議院の自律性を保障するために設けられており、日本国憲法第50条に明記されています。具体的には、国会の会期中に逮捕されることは原則としてなく、もし会期前に逮捕された議員がいる場合には、その議院の要求に応じて会期中に釈放されなければならないとされています。

不逮捕特権の意義

この特権の背景には、歴史的な反省があります。過去には、君主が議会内の反対派を逮捕するなど、議員の活動が権力によって妨害されてきた経緯があります。不逮捕特権は、そのような不当な圧力から議員を守るために設けられたのです。言い換えれば、これは議会の独立を守り、自由な議論を促進するための重要な制度といえます。

適用範囲と制限

不逮捕特権は、「会期中」という特定の期間に限定されます。会期中と見なされるのは国会が正式に開催されている期間であり、継続審査はその対象外です。また、参議院の緊急集会なども会期中に準じて扱われます。一方で、「逮捕」とは、刑事訴訟法に基づく逮捕だけでなく、行政手続きによる身柄の拘束も含まれますが、身体的拘束を伴わない訴追には適用されないと解されています。

例外的要件

憲法では不逮捕特権に例外を設けており、具体的には「法律の定める場合を除いて」と規定されています。国会法33条では、現行犯に該当する場合に逮捕が可能であると明記されており、犯罪事実が明白であるため不当逮捕のリスクが低いと判断されています。

現行犯逮捕の実例

実際、日本の国会議員が現行犯として逮捕された例としては、1952年の器物損壊罪で逮捕された衆議院議員や、2005年の強制わいせつ罪での逮捕事件などがあります。これらのケースは、不逮捕特権が議員の責任と権利のバランスを保つためにいかに重要であるかを示しています。

逮捕許諾のプロセス

国会議員が逮捕される際には、その院の許諾を得る必要があります。この場合は、内閣が裁判所に提出した要求書を基に行動し、議院運営委員会での審査を経て議決がなされます。逮捕の正当性については学説上の対立もありますが、原則としては議会活動の重要性が考慮されるべきです。

釈放要求の手続き

会期前に逮捕された議員がいる場合、所属する議院の要求によって会期中に釈放されることが義務づけられています。この際、議員20人以上の連名でその理由を添えた要求書が必要とされています。しかし、実際には過去にこのような釈放要求が本会議で採決されたことはありません。

議員の権利と司法制度との関連

不逮捕特権は政治的な権利保障の一環ですが、その行使が不当な保護に繋がる危険性もあり、適正な司法の運用が懸念されることもあります。このように、不逮捕特権は日本における議会の独立性を保つための基盤ではあるものの、同時にその運用には慎重さが求められます。

不逮捕特権は、国会議員の職務を行う上での重要な支えであり、政治的活動の自由を確保するためには欠かせない制度であると言えるでしょう。

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