中津万象園

中津万象園：近江八景を映す、歴史と自然が織りなす美空間

香川県丸亀市中津町に広がる中津万象園は、別名「万象園」とも呼ばれる池泉回遊式の大名庭園です。丸亀城の城下町に近く、豊かな自然と歴史が融合した、訪れる人を魅了する空間となっています。

330年以上の歴史：丸亀藩主の遺志が今に繋がる

貞享5年（1688年）、丸亀藩主であった京極高豊の命によって造られたこの庭園は、約5ヘクタールもの広大な敷地を誇ります。京極氏の故郷である近江国（現在の滋賀県）の琵琶湖を模して造られた「八景池」を中心とした景観は、まさに圧巻です。池には、「帆」「雁」「雪」「雨」「鐘」「晴嵐」「月」「夕映」と、近江八景になぞらえた島々が浮かび、それらを繋ぐ橋を渡りながら庭園を散策することができます。

庭園の象徴：八景池と朱塗りの邀月橋

八景池は、庭園の心臓部と言えるでしょう。その水面に映る景色は、時間帯や季節によって変化に富み、訪れる度に新たな魅力を発見できます。池に架かる朱塗りの邀月橋は、鮮やかな色彩で庭園に彩りを添え、景観のアクセントとなっています。

歴史的建造物：時の流れを感じさせる数々の遺構

庭園内には、歴史を感じさせる建造物が点在しています。かつて潮の満ち引きを眺めることができたという「観潮楼」は、現存最古の煎茶室と言われ、貴重な文化財として大切に保存されています。また、「母屋」と呼ばれる建物は茶室を備え、その前庭には樹齢600年ともいわれる大傘松が悠然と枝を広げています。この母屋と観潮楼は、丸亀市指定文化財の中津御茶所として登録されています。

さらに、庭園の入口には、くぐると長生きすると言われている「松寿関」が設けられています。その他にも、「魚楽亭」、「筆海亭」、「松帆亭」など、趣の異なる休憩所が点在し、庭園散策の疲れを癒やすことができます。「石投げ地蔵尊」も、静かに佇み、訪れる人の心を穏やかにします。

併設の丸亀美術館：多様な文化に触れる

万象園内には、丸亀美術館も併設されています。絵画館ではクールベ、コロー、ミレーといったバルビゾン派の作品を中心に、西洋絵画の世界を楽しむことができます。陶器館では、オリエント地域で紀元前2500年ごろから13世紀にかけて出土した彩文土器や陶器、ひいな館では江戸時代から昭和時代の雛人形など、様々な時代の美術工芸品を鑑賞できます。本館棟や懐風亭（庭園に面した和風レストラン）も、美術館の施設として利用できます。万象園ホールも併設されており、多様なイベントにも対応しています。

中津万象園：自然と歴史の調和

中津万象園は、単なる庭園ではなく、歴史、文化、そして自然が一体となった、貴重な空間です。1982年に整備公開されたこの庭園は、現代においてもその美しさを保ち続け、多くの人々に安らぎと感動を与え続けています。丸亀を訪れた際には、ぜひこの美しい庭園を散策し、時の流れに思いを馳せてみてください。

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