中津留章仁

中津留 章仁

（なかつる あきひと）

1973年3月1日、日本の劇作家。

人物と活動

大分県に生まれ、大分県立佐伯鶴城高等学校を経て明治大学理工学部を卒業。大学卒業後の1999年、Last Creators Production（LCP）を立ち上げ、演劇活動を開始。当初は「空間詩人」という名義でも活動していた。2000年には自身の劇団となるTRASHMASTERS（トラッシュマスターズ）を旗揚げし、主宰としてほぼ全ての作品の脚本と演出を手掛けている。旗揚げ初期はブラックコメディー色の強い作品を上演していたが、2003年に上演した第7回公演『TRASHMASTAURANT』がフジテレビの深夜ドラマ『演技者。』として映像化されたことを契機に広く注目を集めるようになる。この作品の成功は、彼の劇作家としての方向性に大きな影響を与えた。

作風の変遷と特徴

『TRASHMASTAURANT』以降、中津留は作風を大きく転換させる。社会が抱える様々な問題、特に現代日本が直面する政治、経済、倫理といったテーマに深く切り込むストレートプレイを主軸とするようになった。彼の作品は、特定の事件や事象をモチーフにしながらも、単なるドキュメンタリーに終わらず、登場人物たちの葛藤や世代を超えた人間関係を丁寧に描き出すことで、普遍的な人間ドラマへと昇華させているのが特徴である。冷静かつ批評的な視点から語られる現代社会論は、観客に強い問いかけを促す。この社会派エンターテインメントとも言える独特のスタイルは、演劇界のみならず、映画やテレビドラマなど他のメディア関係者からも高く評価されており、多くの脚本や演出の依頼を受けるに至っている。

主な受賞歴と評価

中津留章仁の劇作家・演出家としての手腕は、数々の演劇賞によって裏付けられている。特に2011年は、第14回千田是也賞、第46回紀伊國屋演劇賞個人賞、第19回読売演劇大賞選考委員特別賞、同優秀演出家賞と立て続けに受賞し、その評価を不動のものとした。その後も2012年、2014年に読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞するなど、演出家としても高い評価を受け続けている。また、代表的な戯曲賞である鶴屋南北戯曲賞や岸田國士戯曲賞にも複数回最終候補としてノミネートされており、戯曲の文学性も高く評価されている。彼の作品は、TRASHMASTERSの公演だけでなく、トム・プロジェクト、青年劇場、劇団民藝など、様々な劇団やプロデュース公演で上演されており、その影響力は大きい。また、劇団員や関係者も彼の作品を通して読売演劇大賞などの個人賞を受賞しており、カンパニー全体の質の高さを示している。

近年の活動と広がり

近年も精力的に新作を発表し続けている。2023年の『入管収容所』や2024年の『掟』などは、その社会派としての姿勢を明確に示している。特に2024年の舞台『掟』は、特定の政治家を彷彿とさせるキャラクターが登場することでも話題となり、後に中津留自身の監督により映画化されたことも大きな注目を集めた。これは彼が演劇の枠を超え、映像作家としても活動の幅を広げていることを示している。自身の劇団活動の傍ら、日本劇作家協会に所属し、若い劇作家や演出家の育成にも尽力するなど、日本の演劇界の発展にも貢献している。常に現代社会を見つめ、鋭い問題提起と質の高い表現をもって観客に問いかける彼の創作活動は、日本の現代演劇において重要な位置を占めている。

主な活動一覧（抜粋）

舞台:
TRASHMASTERS 主催公演（『TRASHMASTAURANT』、『背水の孤島』、『虚像の礎』、『堕ち潮』、『入管収容所』、『掟』など多数）
トム・プロジェクト、ジェットラグ、青年劇場、劇団民藝など外部への脚本提供、演出
寺山修司原作『無頼漢』の脚本（演出：流山児祥）
ラジヴ・ジョセフ脚本『バグダッド動物園のベンガルタイガー』演出（新国立劇場）
映画:
『掟』（2024年）- 脚本・監督
テレビドラマ:
『演技者。』～TRASHMASTAURANT～（フジテレビ、2003年）- 原案
『下北サンデーズ』（テレビ朝日、2006年）- 一部脚本、出演
『華麗なる一族』（TBS、2007年）- ナレーション脚本
ラジオドラマ:
『カラー・ライフ』～灰の音～（NHK、2012年）- 脚本

受賞歴

第14回 千田是也賞（2011年）
第46回 紀伊國屋演劇賞 個人賞（2011年）
第19回 読売演劇大賞 選考委員特別賞（2011年）
第19回 読売演劇大賞 優秀演出家賞（2011年）
第20回 読売演劇大賞 優秀演出家賞（2012年）
* 第22回 読売演劇大賞 優秀演出家賞（2014年）

（他、戯曲賞ノミネート、劇団・関係者の受賞多数）

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