久須美欽一

俳優 久須美 欽一

久須美 欽一（くすみ きんいち）は、1950年9月23日生まれの日本の俳優です。神奈川県横浜市の出身。本名は久須美 保則で、かつては久須美 護や久須美 弦といった芸名を用いていました。

彼は日本大学文理学部を卒業しました。その学生時代、怪獣の着ぐるみに入るアルバイトを経験したことが、彼のその後の特撮の世界でのキャリアに繋がる重要な転機となりました。

卒業後、久須美氏はテレビや映画といった特撮作品で、多くのキャラクターのスーツアクターとして活躍しました。特に円谷プロダクションが手掛けた作品での貢献は多岐にわたります。『ウルトラファイト』で様々な怪獣や宇宙人を演じ、スーツアクターとしての道を歩み始めました。『ウルトラマンA』においては、光の国の戦士であるゾフィー、そして火炎人ファイヤー星人、宇宙超人スチール星人、邪神超獣カイマンダ、獅子超獣シシゴランといった、ヒーローと怪獣双方の役柄をこなしました。また、『ウルトラマンレオ』では、神秘的な存在であるアストラのスーツアクターを務めています。

円谷作品以外でも、その活動は広範囲に及びました。『ミラーマン』では、物語の終盤となる第36話から最終回まで、主人公ミラーマンを演じました。『レッドマン』では、タイトルキャラクターであるレッドマンを担当。『流星人間ゾーン』では、巨大化した際のゾーンファイターのスーツを纏いました。このように、当時の子供たちに親しまれた多くの特撮ヒーローや怪獣に、命を吹き込んだのです。

東宝の特撮映画においても、印象深い役を務めています。映画『ゴジラ対メカゴジラ』（1974年公開）では、強力な怪獣キングシーサーと、ゴジラの盟友アンギラスのスーツアクターを担当し、怪獣映画史に残る名場面を支えました。

スーツアクターとして活動していた時期には、「野武士の会」というグループに所属し、図師勲氏と親交がありました。図師氏とは中学時代からの友人であり、偶然にも『ゴジラ対メカゴジラ』で共にスーツアクターとして共演するという縁がありました。また、俳優の三重街恒二氏や映画監督の山本晋也氏とも友人関係にあります。

1980年代に入ると、久須美欽一氏は俳優としての活動領域を大きく変えました。この時期から成人映画、いわゆるピンク映画の世界に活躍の場を移します。特撮スーツアクター時代とは全く異なるタイプの役柄に挑戦し、ピンク映画界において欠かせない個性派俳優として独自の地位を確立しました。彼はこのジャンルで、実に多様なキャラクターを演じ分け、その存在感を示し続けます。

成人映画における主な出演作には、キャリア初期の『異常性欲魔』（1976年）、『猟奇薔薇化粧』（1979年）、『ポルノショッカー女変質者』（1980年）などがあります。1980年代には、『肉体保険 ベッドでサイン』（1981年、浜崎役）、『異常変態妻』（1982年）、『乱れた人妻たち』（1982年）、『夜の看護婦 快感注射』（1982年）、『穴を見てよ』（1982年）、『犯しの手口』（1982年）、『セックスカー 監禁暴行』（1982年）、『舐めだまし』（1982年）、『犯しの快感』（1982年）といった多数の作品に出演し、その存在感を確立しました。

彼の活動は1990年代以降も続き、『痴漢奥まで探る』（1987年）、『痴漢覗きは最高』（1989年）、『悪を売る不良セールス』（1990年）などの作品に参加。さらに、『生保レディ 巨乳みだら搾り』（1999年）、『新・日本エロばなし 人妻竜宮城』（2003年、黒潮和己役）、『淫らな果実 もぎたて白衣』（2006年）、『エロマダム 襦袢と喪服』（2007年、男役）など、長期にわたりピンク映画界の第一線で活躍を続けています。近年の作品としては、『SEX and Love Doll：リリー 美爆乳花嫁のカラダのヒミツ』（2020年）にも出演しており、その息の長いキャリアは特筆されます。

特撮作品で子供たちに夢を与えるヒーローや怪獣を演じた一方で、成人映画では人間の欲望や心理を描く作品に数多く出演するという、極めて対照的なキャリアを歩んだ久須美欽一氏。その多才さと、ジャンルを問わずあらゆる役柄に真摯に向き合う姿勢は、日本の映像表現史において独自の光彩を放っています。また、『ゴジラ FINAL WARS』のDVD特典映像に協力するなど、キャリア後も特撮作品への関わりが見られます。彼の存在は、日本の俳優界における異色のキャリアパスを示す一例と言えるでしょう。

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