伊藤俊治

伊藤俊治：美術・写真評論の第一人者、その多彩な活動と業績

伊藤俊治氏は、1953年秋田県生まれの美術評論家、写真評論家、そして美術史家です。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院人文科学研究科修士課程修了という経歴を持ち、西洋美術史を専門としています。多摩美術大学教授を経て、2002年から東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授を務め、2021年に定年退任、名誉教授となりました。現在は、多摩美術大学客員教授、京都芸術大学大学院芸術研究科教授（通信教育）として後進の指導にもあたっています。

多岐にわたる研究と著作活動

伊藤氏の研究分野は多岐に渡り、西洋美術史を基盤としながら、写真、現代美術、メディア論など、幅広い領域を独自の視点で深く考察しています。特に写真史に関する造詣は深く、国内外の研究者から高い評価を受けています。その成果は、数多くの著作、翻訳として結実しています。

主な著書には、『写真都市 City obscura 1830→1980』『ジオラマ論』『生体廃墟論』『20世紀写真史』『機械美術論　もうひとつの20世紀美術史』『陶酔映像論』などがあります。これらの著作は、写真や美術における新たな視点を提示し、多くの読者や研究者に影響を与えてきました。単著のみならず、『日本近代写真の成立』や『ピンナップ・エイジ』といった共編著も多く手がけ、多角的なアプローチによって写真史研究の発展に貢献しています。また、ジョン・バージャーやレスリー・フィードラーといった海外の著名な美術批評家の著作の翻訳にも携わっており、日本の美術・写真研究に国際的な視点を導入する役割も果たしています。

サントリー学芸賞受賞と『ジオラマ論』

1987年には『ジオラマ論　Diorama transfixion 1435-2020 「博物館」から「南島」へ』でサントリー学芸賞を受賞。この著作は、ジオラマという表現形式を歴史的・文化的な視点から深く掘り下げ、美術史研究に新たな地平を開くものとして高く評価されました。単なる美術史の枠を超え、文化人類学、社会学的な視点を織り交ぜた考察は、学際的な研究の先駆的な事例として注目されています。

写真美術館での活動と国際的な視点

伊藤氏は、1985年のつくば写真美術館'85の企画にも参加するなど、写真美術館の活動にも積極的に関与してきました。これは、氏の活動が学術的な研究にとどまらず、社会への積極的な発信を重視していることを示しています。さらに、海外の美術批評家たちの著作翻訳を通して、国際的な視点を積極的に取り入れる姿勢も示しています。これは、日本の美術・写真研究が国際的な文脈の中で位置付けられる上で、重要な役割を果たしました。

教育活動への貢献

東京藝術大学、多摩美術大学、京都芸術大学での教育活動を通して、後進の育成にも力を注いできました。長年に渡る教育活動は、日本の美術・写真研究の未来を担う人材育成に大きく貢献しています。

まとめ

伊藤俊治氏は、美術史、写真史、現代美術論など、多様な分野を横断する独自の研究と、精力的な著作活動、教育活動を通して、日本の美術・写真研究に多大な貢献を果たしてきました。その活動は、今後も日本の美術文化の発展に大きな影響を与えるものと期待されます。 氏の研究は、単なる美術史の記述にとどまらず、現代社会への鋭い洞察と考察が織り込まれており、幅広い読者にとって魅力的なものです。今後も、氏のさらなる活躍が期待されます。

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