佐野ぬい

佐野ぬい：青の画家、その生涯と作品

佐野ぬい(旧姓：佐々木)は、1932年11月16日、青森県弘前市に生まれ、2023年8月23日、慢性心不全のため90歳で永眠しました。和菓子店を営む家に生まれた彼女は、青森県立弘前高等女学校(現・青森県立弘前中央高等学校)を経て、1955年に女子美術大学芸術学部洋画科を卒業します。

卒業後は女子美術大学の助手として教鞭を執り始め、講師、助教授、教授とキャリアを積み重ね、1998年には同大学を定年退職。名誉教授の称号を得るとともに、大学院客員教授、そして2007年から2011年にかけては、第16代学長として女子美術大学のトップに立ちました。

佐野ぬいは、1950年代から一貫して青を基調とした作品を発表し続け、「佐野ブルー」と称される独自の画風を確立しました。鮮やかな青、深い青、そして様々な青の濃淡を巧みに用いたその作品は、見る者の心を静かに揺さぶる力を持っています。その独特の表現から「青の画家」とも呼ばれるようになりました。

彼女の作品は、数々の美術館に収蔵されており、その存在は日本の美術界に大きな足跡を残しています。青森県立美術館、弘前市立博物館、いわき市立美術館、新潟市美術館など、全国各地の美術館で佐野ぬいの作品を見ることができます。さらに、杉並区役所、成田空港駅、弘前市民会館など、公共施設にも彼女の作品は設置され、多くの人々の目に触れています。

佐野ぬいの作品は、単なる色彩の美しさだけでなく、彼女自身の内面世界、そして彼女を取り巻く自然や社会への深い洞察が表現されています。青という色は、時に静謐で、時に力強く、彼女の心の動きを繊細に映し出しています。

その才能は高く評価され、数々の賞を受賞しました。女流画家協会展での受賞を皮切りに、新制作展作家賞を複数回受賞。文化庁買上優秀美術作品にも選ばれ、紺綬褒章も二度受章しています。青森県文化賞、損保ジャパン東郷青児美術館大賞など、数々の栄誉に輝きました。2015年には弘前市名誉市民にも選ばれ、故郷への貢献も認められています。2012年には瑞宝中綬章を受章し、その功績は広く称えられました。

佐野ぬいは、画家としての活動だけでなく、日本美術家連盟の理事、新制作協会会員としても活動。福沢一郎記念美術財団理事、損保ジャパン美術財団理事なども務め、美術界の発展に貢献しました。

2023年8月23日の逝去により、日本の美術界は大きな損失を被りましたが、彼女の残した作品は、これからも多くの人々に感動と勇気を与え続けるでしょう。彼女の「佐野ブルー」は、永遠に人々の記憶に刻まれることでしょう。夫は元新聞記者でエッセイストの佐野寧氏で、2男をもうけています。

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