体温計

体温計：歴史、種類、測定方法、そして安全性

体温計は、人や動物の体温を測定する医療機器です。32℃から42℃の範囲を測定するものが一般的ですが、42℃を超える高温ではタンパク質が変性し生命に危険が及ぶため、正確な測定は困難です。

体温計の歴史

体温計の起源は17世紀初頭、イタリアの医師サントーリオ・サントーリオにまで遡ります。ガリレオ・ガリレイの同僚であった彼は、既存の温度計を応用し、人体の温度測定を試みました。この発明は、後の体温計開発の礎となりました。

体温計の種類

表示方式

アナログ式: 水銀などの液体の熱膨張を利用したもので、目盛りから体温を読み取ります。かつては広く普及していましたが、水銀の毒性や取り扱いの煩雑さから、2021年には日本では製造・輸入が禁止されました。
デジタル式: サーミスタなどの電子部品を用いて体温を測定し、液晶ディスプレイに数値で表示します。精度が高く、使いやすいため、現在最も普及しているタイプです。予測式と実測式があり、測定時間や精度の違いがあります。

動作原理

気体の熱膨張式: 最初の体温計で使用された方式ですが、現在ではほとんど使われていません。
水銀式: 水銀の熱膨張を利用した方式で、アナログ式体温計の主流でした。水銀の毒性から、日本では使用が禁止されています。
灯油・アルコール式: 水銀の代わりに灯油やアルコールを用いた安全な方式ですが、精度は水銀式に劣ります。
サーミスタ式: サーミスタの抵抗変化を利用した電子式体温計で、実測式と予測式があります。実測式は正確性が高く、予測式は測定時間が短いという特徴があります。
赤外線式: 人体から放射される赤外線を検知して体温を測定します。非接触で測定できるため、乳幼児や救急現場で有用です。ただし、測定値に誤差が生じやすいという欠点もあります。

形状

棒状: 最も一般的な形状で、多くの体温計がこの形状です。
プローブ＋レシーバ式: 測定センサーと表示部がケーブルで接続された形状で、高機能な機種に多いです。

医療機器としての分類

体温計は、接触型・非接触型を問わず管理医療機器に分類されます。具体的には、電子体温計、耳赤外線体温計、皮膚赤外線体温計などがあります。水銀を使用する体温計は、水銀に関する条約により製造・輸入が禁止されています。

測定方法と部位

体温測定の部位によって、測定値や測定時間が異なります。

舌下温（口腔温）: 舌の下に体温計を挟んで測定する方法。正確な体温を測定できますが、測定には5分以上かかります。
腋下温（腋窩温）: わきの下に体温計を挟んで測定する方法。衛生面から公共の場で用いられることが多いです。測定には10分以上かかります。
直腸温: 肛門に体温計を挿入して測定する方法。最も正確な体温が得られますが、不快感があるため、乳幼児や意識のない患者に用いられます。測定には3～5分かかります。
鼓膜温: 耳穴に赤外線体温計を挿入して測定する方法。迅速に測定できますが、測定値の誤差が大きくなる可能性があります。
額の表面温度: 額に赤外線体温計を当てて測定する方法。非接触で測定できますが、正確性に欠ける可能性があります。

主要メーカー

オムロン、テルモ、タニタ、シチズン・システムズ、ドリテック、ピジョンなど多くの企業が体温計を製造しています。

安全な体温計の使い方

水銀体温計を使用する際は、破損に注意し、水銀を吸い込まないように注意が必要です。デジタル式体温計を使用する際は、取扱説明書をよく読んで正しく使用しましょう。

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