作文大体

『作文大体』について

『作文大体』（さくもんだいたい）は、平安時代に成立した漢詩の作成に関する手引書です。漢詩の技法や注意点が詳しく記されており、10の重要項目を冒頭に掲げています。この書物は、室町時代までの長い期間にわたり、さまざまな人物によって加筆や増補がなされてきたため、現在も数多くの異本が存在しています。

成立と歴史

最も古い形態を残しているとされるのは、東寺観智院旧所蔵本で、現在は天理大学附属天理図書館に収蔵されています。この本は、漢詩を学ぶ上での基本的な事典とされ、多くの学者や詩人に利用されました。なお、長い間に多くの人物が加筆を行ったため、各本の内容には大きな差異も見られます。

主な増補者としては中御門宗忠や土御門通親などがおり、彼らはこの古典書をより掘り下げる形で内容を豊かにしました。これらの人物の手が加わったことにより、詩作りの技術や美学が深く探求されていったことがわかります。

構成と内容

『作文大体』は、全1巻から成り、以下のような構成になっています。まず最初に、天慶2年（939年）に作成された大江朝綱の『倭注切韻』の序文が掲げられており、その意図ははっきりとはしませんが、漢詩の作成にあたっての重要な出発点を示していると考えられています。この序文に続いて、漢詩作成に必要な10の注意点がリストされます。

次に「筆大体」「詩本体」「雑体詩」「詩雑例」といった4つの独立した項目が続き、各項目ごとに異なる観点からの詩作りの技術が述べられています。さらに、東山御文庫旧所蔵本には「詩四病」や「諸句体」などの追加項目が含まれていることから、様々なバリエーションが生まれる原因にもなっています。

特に注目すべき点は、冒頭の10項目と次の4項目はどの諸本にも共通して存在する一方で、文体や内容においては明らかな違いが見られ、漢詩以外の散文に関する記述が含まれていることから、異なる著者が関与した可能性が高いとされている点です。

諸本の違い

『作文大体』の多様性は、特に江戸時代に著名な版が出回ったことによって顕著になります。増補が続けられた結果、各本には異なる解釈や具体的な例が盛り込まれることとなり、研究者たちによる比較や検討が行われています。また、室町期に入ってからも加筆されたとされる京都府立総合資料館所蔵の一冊も存在し、時代を超えた興味深い作品となっています。

このように、『作文大体』はただの漢詩作成の指南書ではなく、平安から室町時代までの詩文化の流れを知るための貴重な資料でもあります。

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