兎月書房

株式会社兎月書房について

株式会社兎月書房（とげつしょぼう）は、かつて東京都千代田区三崎町に位置していた日本の貸本出版社です。創業者の清水袈裟人が社長兼編集長を務めていました。この出版社は、貸本市場における中堅版元として、数々の著名漫画家を輩出したことで知られています。特に、水木しげるや竹内寛行、つゆき・サブロー、橋本将次、福田年兼など、多彩なジャンルの作家たちが在籍しました。

出版の特徴と成り立ち

兎月書房は、戦記物やギャグ、少女漫画、ホラーなど、幅広いジャンルの貸本を出版していました。しかし、1959年の時点で、『週刊少年サンデー』や『週刊少年マガジン』といった週刊漫画雑誌の創刊が相次ぎ、貸本漫画の需要は次第に減少していきました。兎月書房もその影響を受け、経営面での厳しさを感じるようになりました。

同年、兎月書房は事業の再起を図るため、当時流行していた劇画短編集の出版に着手しました。これにともない、劇画工房の貸本劇画家を高待遇で起用し、『摩天楼』シリーズを刊行し、ある程度成功を収めます。さらに、1960年からは水木しげるの『墓場鬼太郎』をはじめとする怪奇漫画に新たに力を入れました。

経営危機と衰退

しかし、貸本業界全体の厳しい状況に抗しきれず、兎月書房は1962年9月に倒産しました。特に、水木しげるとの関係の悪化が経営に深刻な影響を及ぼしました。水木は原稿料未払いを理由に兎月書房との絶縁状態にあり、その後の和解の際には未払い分の清算などが条件となりましたが、倒産の運命を変えるには至りませんでした。

倒産後も、水木しげるは原稿料を受け取ることができず、受け取っていた手形は債権として残りました。社長の清水は、その後五反田の小さな印刷会社で働き、未払い分の一部を支払ったとされています。

継承と再評価

兎月書房は、その後の漫画界にも影響を与えています。水木しげるの人気作は、今もなお多くのファンに愛され、特に『ゲゲゲの女房』で描かれた「富田書房」が兎月書房をモデルにしていることも多くの人に知られています。また、兎月書房から出版された作品の一部は、小学館クリエイティブによって復刻され、現在でも入手可能です。さらに、貸本漫画の中でも、水木しげるや竹内寛行の『墓場鬼太郎』の再評価が進んでおり、一部作品はマニアの間で高い取引価格が付けられています。

出版物一覧

主な出版物には次のような作品が含まれます：

• - 墓場鬼太郎（全19巻、4巻以降は竹内寛行による）
• - 河童の三平（全8巻）
• - 摩天楼シリーズ
• - 無双シリーズ
• - 妖奇伝シリーズ
• - 寄生人（太田出版より再発）

参考文献

まんだらけ出版『まんだらけZENBU』72号（2015年11月）では、兎月書房の特集が掲載されており、興味がある方はぜひご一読ください。

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