全国新酒鑑評会

全国新酒鑑評会の概要

全国新酒鑑評会は、1911年に始まり現在も続いている日本の日本酒の新酒を対象とした全国規模の鑑評会です。このイベントは、酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催で行われており、毎年新酒の吟醸酒の品質を評価します。評価基準は、醸造技術と工業製品としての品質に重きを置いており、単に美味しさを求めるものではありません。

沿革

明治・大正時代

明治時代から大正時代にかけて、日本各地で日本酒の品評会が行われていました。しかし、地方ごとに評価基準が不統一であったため、全国的な統一基準が求められるようになりました。また、当時の醸造技術は未熟であったため、酒が腐ることも珍しくなく、技術向上のためにも品評会が必要でした。明治政府も酒税を財源として重視していたため、醸造業を後押しする政策を進めました。

1927年には全国清酒品評会が開催され、1911年には第一回全国新酒鑑評会が実施されました。品評会は酒の優劣を示す目的を持ちますが、鑑評会は製造者に対する専門家の評価を提供し、個々の技術向上に寄与することがその目的です。この時期、優秀と評価された酵母が協会から頒布され、全国の酒蔵で使用されることになりました。

昭和時代

昭和初期には秋田の新政から分離された新政酵母が流行し、1935年に協会第6号酵母として頒布されました。この頃、山田錦が優位を占めるようになりましたが、1937年の日中戦争の影響で酒の質が低下し、業界は衰退を余儀なくされました。1945年の戦後は鑑評会が行われませんでしたが、翌1946年には再開されました。この際、食糧難を反映して精米歩合に規制が設けられました。この状況で長野の真澄の酵母が使われるようになり、全国の酒蔵で広く使用されました。

平成時代

2000年以降、主宰者が国立醸造試験所から独立行政法人酒類総合研究所に移行し、出品資格が緩和されました。これにより、さまざまな酒蔵が自由に出品することができるようになりました。また、鑑評会の目的が醸造業の「鑑査」から「育成」に変わり、消費者への情報開示が進められています。さらに、各県の酒造組合などが独自に行う別の鑑評会も活発に開催されています。

鑑評制度

鑑評の方法

専門の酒の評価者や醸造試験場の技術者が唎き酒を行い、香味や品質を評価します。職業的評価に加え、科学的分析も実施されます。

結果の発表

鑑評会では、まず予審で優秀な酒を選定し、さらにその中から決審で金賞を決定します。一般的に「銀賞」と呼ばれるものは正式には存在せず、中間評価の「入賞酒」です。結果は、出品酒が存在する都道府県ごとに発表されます。

問題点

鑑評会に対する批判点もいくつか存在します。評価方法が評価基準に制限され、特定の酒だけが優遇されること、また、出品酒が一般市場に出回らない品質のものであるため、消費者には利用価値が薄いとされます。しかし、鑑評会は蔵元にとって重要な励みとなり、もちろん実施し続けることが大切であるという意見もあります。近年は一般消費者も新酒の評価に参加できる機会が増えています。これらを配慮しつつ、今後の改善が期待されます。

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