内裏式

内裏式（だいりしき）について

内裏式は、日本の平安時代前期に成立した最古の公式儀式集であり、その内容は儀式の方法や手順を体系的に整理しています。この書物は全3巻から成り、平安時代における重要な文化的遺産とされています。特に、嵯峨天皇の治世下で、儀式に関する新旧の情報を集めて編纂されたことが特徴的です。

編纂の経緯

内裏式の編纂は、嵯峨天皇の時代に始まりました。この際、右大臣の藤原冬嗣や中納言の良岑安世ら7名の貴族に対して、既存の儀式と新たに必要とされる儀式の記録を整理するよう命じられました。具体的には、旧章と新式の儀式に関する情報を集めて検討し、弘仁12年1月30日（821年3月7日）にはその完成が上奏されました。

その後、淳和天皇の意向により、右大臣の清原夏野ら4名がいくつかの改訂を行いました。天長10年2月19日（833年3月13日）には改訂された版が再び上奏され、これによって内裏式の内容がさらに詳細に整えられました。また、承和年間以降の加筆もあるため、現代の研究者は、この書が時代の流れと共に変化していったことを考慮しています。

内容とその構成

内裏式の序文には、「元正（元日）より季冬（冬の終わり＝大晦日）に訖り常に履行する所」と記されており、年中行事や臨時の軍国に関する儀式の概要が述べられています。この書の中には、上巻に恒例の7項目、中巻に恒例の13項目、下巻に臨時の4項目といった具合に、詳細な儀式次第が明記されています。

しかし、現存する内裏式の文書には、これとは異なる項目や文章が確認され、他の後世の文献に引用されるものもあることから、現在のものが完全な形で伝わっているとは考えられていません。文化に関心を持つ人々にとっては、内裏式が持つ儀式の重要性とその変遷を理解する必要があります。

現存本とその歴史的意義

内裏式は平安時代の朝廷において式筥（しきばこ）に収められ、節会の際には天皇が持参していました。また、殿上人や蔵人たちの間でも常に利用される書物であったため、重要な儀式の実施に寄与していました。しかし、現在に残る内裏式は抄録や残欠を再編した形でしか存在せず、完全な形のものは見つかっていません。

加えて、同時期に存在したとされる『内裏儀式』との関連については、多くの議論が交わされているものの、確実な関係は不明のままです。これにより、内裏式の研究は今後も進められるべきテーマとされています。

参考文献

内裏式に関する詳細な研究や論考については、以下の文献が参考になります。

• - 古瀬奈津子「内裏式」『国史大辞典 8』（吉川弘文館 1987年）
• - 所功「内裏儀式・内裏式」『日本史大事典 4』（平凡社 1993年）
• - 所功「内裏式」『平安時代史事典』（角川書店 1994年）
• - 神谷正昌「内裏式」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）

以上のように、内裏式は日本の歴史において重要かつ意義深い文書であり、その内容は現在も多くの研究者によって探求されています。

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