清原夏野
清原夏野（きよはら の なつの）は、平安時代初期に活躍した皇族・公卿です。舎人親王の孫にあたる小倉王を父に持ち、その五男として生まれました。当初は皇族でしたが、後に臣籍降下し、清原真人姓を賜りました。
夏野は、若い頃からその才能を発揮し、内舎人という役職を経て、桓武天皇の時代に父と共に臣籍降下を願い出て許可されました。この際、同名の皇女を避けるため、「繁野」から「夏野」へと改名しています。平城朝では中監物、大舎人大允を歴任し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。
嵯峨天皇の時代に入ると、その才能はさらに開花します。蔵人、春宮大進を兼任し、天皇と皇太子に近侍しました。その後も順調に昇進を重ね、宮内少輔、春宮亮を経て、従五位上、正五位下へと位階を上げました。また、讃岐介、讃岐守、伯耆守、下総守といった地方官も兼任し、地方行政にも携わりました。
淳和天皇が即位すると、夏野は春宮亮としての功績を認められ、従四位下、蔵人頭に叙任されました。その後、参議となり公卿に列すると、その昇進は目覚ましく、中納言、権大納言、大納言と、着実に位を上げていきました。天長9年（832年）には、ついに右大臣に任ぜられ、太政官の要職を担うこととなります。これは、当時左大臣であった藤原緒嗣に次ぐ地位であり、夏野の政治的影響力の大きさを物語っています。
夏野は、その卓越した学識と政治・経済に対する深い見識によって、朝廷内外からの信頼が厚く、淳和天皇の治世において、数々の重要な政策に関わりました。その中でも特に注目されるのは、以下の点です。
国司制度の改革: 天長元年（824年）、諸公卿の提言に基づき、国司に関する新たな制度が制定されました。この際、国司が任期中に1、2度入京して天皇に施政を報告すること、常荒田の耕食を許可することについては、夏野の提言が採用されました。これは、地方行政の透明性を高め、農民の生活を安定させるための重要な施策でした。
親王任国制度の設立: 天長3年（826年）、桓武、平城、嵯峨の各天皇の子息である多数の親王家の財源確保と、親王に充てるべき官職の不足を解消するため、諸親王を常陸国、上総国、上野国の国守（太守）に任じる親王任国制度を設立しました。この制度は、皇族の経済的基盤を安定させ、国家財政にも貢献しました。
播磨国における港湾建設: 天長9年（832年）、私財を投じて播磨国に魚住泊を建設しました。この事業は、朝廷からもその重要性を認められ、最終的には公金による助成が行われました。これにより、地域経済の活性化に大きく貢献しました。
法令の編纂: 天長10年（833年）、菅原清公らと共に『令義解』を編纂しました。また、『内裏式』の改定も完了させ、さらに『日本後紀』の編纂にも加わりました。これらの事業は、律令政治の基盤を強化し、後世に貴重な歴史資料を残すことにつながりました。
天長10年（833年）には、仁明天皇の即位に伴い従二位に叙せられ、その功績を称えられました。承和4年（837年）に56歳で薨去し、その死後、正二位の位階が追贈されました。
夏野は、その人柄も広く知られており、平安京右京の双岡に山荘を営み、「双岡大臣」「比大臣」と称されました。この山荘には、淳和天皇や嵯峨上皇も行幸し、水木を鑑賞したと伝えられています。山荘跡には、後に天安寺が建立され、現在の法金剛院がその跡とされています。また、夏野が嵯峨天皇の行幸に従った際に詠んだ漢詩作品は、『経国集』に収録されており、その優れた文学的才能もうかがい知ることができます。
夏野は、その優れた政治手腕と学識の高さ、そして温厚な人柄によって、朝廷内外から深く尊敬されました。その生涯は、平安時代初期の政治史において、重要な役割を果たした人物として、今もなお語り継がれています。
延暦22年（803年）5月：内舎人
延暦23年（804年）6月21日：臣籍降下（清原真人姓）、改名（繁野→夏野）
大同2年（807年）2月：中監物。5月：大舎人大允
時期不詳：正六位上
弘仁元年（810年）3月10日：蔵人。9月：春宮大進（皇太子：大伴親王）
弘仁2年（811年）6月8日：従五位下。7月23日：宮内少輔。10月11日：春宮亮
弘仁4年（813年）正月10日：兼讃岐介
弘仁5年（814年）8月11日：従五位上
弘仁7年（816年）正月10日：兼讃岐守
弘仁11年（820年）正月：兼伯耆守
弘仁12年（821年）正月：兼下総守
弘仁13年（822年）正月7日：正五位下
弘仁14年（823年）4月：蔵人頭。4月27日：従四位下。5月1日：兼左近衛中将近江守。11月25日：参議、左中将近江守如元
天長元年（824年）正月7日：従四位上
天長2年（825年）正月4日：正四位下。7月2日：従三位、中納言。8月：兼左衛門督
天長3年（826年）8月22日：兼左近衛大将。9月22日：兼民部卿
天長5年（828年）3月19日：権大納言
天長7年（830年）9月11日：大納言
天長8年（831年）正月4日：正三位
天長9年（832年）11月2日：右大臣、左大将如元
天長10年（833年）3月6日：従二位
承和4年（837年）6月8日：停左近衛大将。日付不詳：贈正二位
父：小倉王
母：小野家主（小野縄手の娘）
妻：葛井庭子
生母不明の子女
次男：清原滝雄（799-863）
三男：清原沢雄
四男：清原秋雄（812-874）
女子：清原春子 - 淳和天皇後宮
経歴
夏野は、若い頃からその才能を発揮し、内舎人という役職を経て、桓武天皇の時代に父と共に臣籍降下を願い出て許可されました。この際、同名の皇女を避けるため、「繁野」から「夏野」へと改名しています。平城朝では中監物、大舎人大允を歴任し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。
嵯峨天皇の時代に入ると、その才能はさらに開花します。蔵人、春宮大進を兼任し、天皇と皇太子に近侍しました。その後も順調に昇進を重ね、宮内少輔、春宮亮を経て、従五位上、正五位下へと位階を上げました。また、讃岐介、讃岐守、伯耆守、下総守といった地方官も兼任し、地方行政にも携わりました。
淳和天皇が即位すると、夏野は春宮亮としての功績を認められ、従四位下、蔵人頭に叙任されました。その後、参議となり公卿に列すると、その昇進は目覚ましく、中納言、権大納言、大納言と、着実に位を上げていきました。天長9年（832年）には、ついに右大臣に任ぜられ、太政官の要職を担うこととなります。これは、当時左大臣であった藤原緒嗣に次ぐ地位であり、夏野の政治的影響力の大きさを物語っています。
夏野は、その卓越した学識と政治・経済に対する深い見識によって、朝廷内外からの信頼が厚く、淳和天皇の治世において、数々の重要な政策に関わりました。その中でも特に注目されるのは、以下の点です。
国司制度の改革: 天長元年（824年）、諸公卿の提言に基づき、国司に関する新たな制度が制定されました。この際、国司が任期中に1、2度入京して天皇に施政を報告すること、常荒田の耕食を許可することについては、夏野の提言が採用されました。これは、地方行政の透明性を高め、農民の生活を安定させるための重要な施策でした。
親王任国制度の設立: 天長3年（826年）、桓武、平城、嵯峨の各天皇の子息である多数の親王家の財源確保と、親王に充てるべき官職の不足を解消するため、諸親王を常陸国、上総国、上野国の国守（太守）に任じる親王任国制度を設立しました。この制度は、皇族の経済的基盤を安定させ、国家財政にも貢献しました。
播磨国における港湾建設: 天長9年（832年）、私財を投じて播磨国に魚住泊を建設しました。この事業は、朝廷からもその重要性を認められ、最終的には公金による助成が行われました。これにより、地域経済の活性化に大きく貢献しました。
法令の編纂: 天長10年（833年）、菅原清公らと共に『令義解』を編纂しました。また、『内裏式』の改定も完了させ、さらに『日本後紀』の編纂にも加わりました。これらの事業は、律令政治の基盤を強化し、後世に貴重な歴史資料を残すことにつながりました。
天長10年（833年）には、仁明天皇の即位に伴い従二位に叙せられ、その功績を称えられました。承和4年（837年）に56歳で薨去し、その死後、正二位の位階が追贈されました。
人物
夏野は、その人柄も広く知られており、平安京右京の双岡に山荘を営み、「双岡大臣」「比大臣」と称されました。この山荘には、淳和天皇や嵯峨上皇も行幸し、水木を鑑賞したと伝えられています。山荘跡には、後に天安寺が建立され、現在の法金剛院がその跡とされています。また、夏野が嵯峨天皇の行幸に従った際に詠んだ漢詩作品は、『経国集』に収録されており、その優れた文学的才能もうかがい知ることができます。
夏野は、その優れた政治手腕と学識の高さ、そして温厚な人柄によって、朝廷内外から深く尊敬されました。その生涯は、平安時代初期の政治史において、重要な役割を果たした人物として、今もなお語り継がれています。
官歴
延暦22年（803年）5月：内舎人
延暦23年（804年）6月21日：臣籍降下（清原真人姓）、改名（繁野→夏野）
大同2年（807年）2月：中監物。5月：大舎人大允
時期不詳：正六位上
弘仁元年（810年）3月10日：蔵人。9月：春宮大進（皇太子：大伴親王）
弘仁2年（811年）6月8日：従五位下。7月23日：宮内少輔。10月11日：春宮亮
弘仁4年（813年）正月10日：兼讃岐介
弘仁5年（814年）8月11日：従五位上
弘仁7年（816年）正月10日：兼讃岐守
弘仁11年（820年）正月：兼伯耆守
弘仁12年（821年）正月：兼下総守
弘仁13年（822年）正月7日：正五位下
弘仁14年（823年）4月：蔵人頭。4月27日：従四位下。5月1日：兼左近衛中将近江守。11月25日：参議、左中将近江守如元
天長元年（824年）正月7日：従四位上
天長2年（825年）正月4日：正四位下。7月2日：従三位、中納言。8月：兼左衛門督
天長3年（826年）8月22日：兼左近衛大将。9月22日：兼民部卿
天長5年（828年）3月19日：権大納言
天長7年（830年）9月11日：大納言
天長8年（831年）正月4日：正三位
天長9年（832年）11月2日：右大臣、左大将如元
天長10年（833年）3月6日：従二位
承和4年（837年）6月8日：停左近衛大将。日付不詳：贈正二位
系譜
父：小倉王
母：小野家主（小野縄手の娘）
妻：葛井庭子
生母不明の子女
次男：清原滝雄（799-863）
三男：清原沢雄
四男：清原秋雄（812-874）
女子：清原春子 - 淳和天皇後宮
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