利き手

利き手の概念について

利き手（ききて）とは、人が左右の手の中で運動能力や器用さに優れ、頻繁に使用する手を指します。この利き手の特定には、利き手テストを用いることが一般的ですが、世界中の多くの人々は右利きの割合が約90％、左利きが約10％という推移があります。この傾向は旧石器時代から続いていると考えられています。

利き手の判定

一般的に、字を書くために使う手が利き手と判断されることが多いですが、これは教育による影響もあります。このため、字を書く手と実際の利き手が一致しないことも珍しくありません。また、スポーツや食事の際に持つ道具などでも利き手の判断が行われることが多いです。特に、片方の手を専門的に訓練し、異なる手を使えるようにする「矯正」も行われます。中には、両手を器用に使う「両利き」や、特定の動作において異なる手を選ぶ「クロスドミナンス」を示す人々も存在します。

利き手の発達

利き手がどのように形成されるかについては、さまざまな理論があります。2013年の研究によると、乳児の39%が、また18〜24ヶ月の幼児の97%が手に対する好みを示していることが確認されました。有力な説としては、出生前の発生が影響しているかもしれません。研究者たちは、胎児の時期に手の利き手が決定づけられる可能性があると考えています。

脳の役割

利き手は脳の機能とも関連しています。話すことや細かい作業は、片方の脳半球で処理する方が効率的だとされ、多くの人にとって左脳が言語を担当するため、右利きが多いという理論があります。ただし、左利きの人々の約70%も左脳で言語を処理するため、全ての人に当てはまるわけではありません。逆に、3割の左利きの方々は右脳を利用することが示唆されています。

遺伝の要因

利き手の決定には遺伝が影響を及ぼすことが知られています。研究によると、右利きの親を持つ場合、子供が左利きになる確率は10%ほどですが、両親が共に左利きだと26%に上昇します。これに関する研究は多く、遺伝の複雑さを示す証拠も増えてきています。

環境要因とエピジェネティクス

遺伝的要因が利き手に影響を与えるのは確かですが、実に75%は環境要因によるとされています。特に、出生前のホルモンの影響や非対称性が、利き手の形成に関与していることが複数の研究で示されています。エピジェネティクスが利き手の発達において重要な役割を果たす可能性があります。

進化の観点

生物の進化の過程でも利き手に相当する概念は見受けられます。カンガルーやオウムなどの動物でも、特定の足や手を使う傾向があり、霊長類の中には左右対称ではない特徴を持つものも存在します。そして、利き手という概念は人間だけに限らず、動物の研究でも注目されています。

利き手と文化

このような背景を持つ「利き手」という現象は、日常生活や文化にも影響を及ぼしています。たとえば酒を好む人を「左党」と呼ぶ文化的な表現や、左手で団扇を持って扇ぐ「左団扇」など、利き手に由来する成句や言い回しが存在します。

このように、利き手は単なる身体の特徴にとどまらず、脳、遺伝、環境、文化など、さまざまな要因が絡み合った非常に複雑な現象であることがわかります。

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