原美術館

原美術館：近代建築と現代美術の融合、そして新たな出発

1979年、東京・品川に開館した原美術館は、現代美術を愛する人々にとって特別な場所でした。その歴史は、1938年に建てられた豪壮な邸宅に遡ります。実業家・原邦造氏の私邸として、当時を代表する建築家・渡辺仁氏によって設計された建物は、戦後の混乱期を経て、原氏の孫である原俊夫氏によって美術館として再生されました。

渡辺仁の建築と現代美術の共存

美術館となった建物は、東京国立博物館本館や銀座和光本館を手掛けた渡辺仁氏による設計で、洗練されたモダン建築の風格を今に伝えています。その重厚な空間の中で、ジャン＝ピエール・レイノー、森村泰昌、宮島達男といった現代アーティストの作品が展示され、過去と現在の調和が見事に表現されていました。庭園にも、関根伸夫や多田美波といった作家の作品が配置され、美術館全体が一つの芸術作品として機能していたのです。

最新の現代美術と新進作家の発掘

原美術館は、常に現代美術の最先端を捉え、意欲的な企画展を展開することで知られていました。特に「ハラ・アニュアル」展は、若手アーティストの発掘と育成に貢献し、日本の現代美術シーンに大きな影響を与えました。館内には、レイノーの『ゼロの空間』、宮島達男の『時の連鎖』、森村泰昌の『輪舞』など、時代を代表する作品が常設展示されていました。これらの作品は、来館者に現代美術の多様な表現様式と可能性を提示し、深い感銘を与えていました。

老朽化と閉館、そして新たな拠点へ

しかし、築80年を超える建物は老朽化が進み、バリアフリー化などの課題も抱えていました。そのため、2018年、原美術館は2021年1月での閉館を発表しました。閉館は残念ではありましたが、その活動は群馬県渋川市にある姉妹館「ハラ ミュージアム アーク」（現・原美術館ARC）へと引き継がれることになりました。同館は、磯崎新氏設計の近代的な建物で、原六郎コレクション（国宝の青磁下蕪花生を含む）も保管されています。

原美術館の遺産

原美術館は、単なる美術館としてだけでなく、近代建築と現代美術の融合、そして新進作家の育成という重要な役割を果たしてきました。閉館は残念ではありますが、その歴史的価値と貢献は、今後も日本の美術界に大きな影響を与え続けるでしょう。東京・品川にあった美術館はなくなりましたが、原美術館の精神は、群馬の地に受け継がれ、新たな形で発展を続けています。原美術館ARCでは、引き続き現代美術の企画展や、原六郎コレクションの展示などを通して、現代美術の振興に貢献していくことでしょう。

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