厩務員

厩務員（きゅうむいん）についての解説

厩務員とは、主に馬の世話を担う職業のことを指します。特に競馬の分野においては、厩舎に所属し、調教師からの指示のもとで競走馬の世話を行う人々です。厩務員の役割は多岐にわたり、彼らは獣医や騎手と連携して、競走馬の健康とパフォーマンスの向上に努めます。

日本の競馬における厩務員の役割

日本の厩務員は、以下のような具体的な業務を遂行します。

• - 飼葉の世話: 食事の準備や管理を行います。
• - 馬房の清掃: 馬が過ごす場所の清潔を保ちます。
• - 寝藁の準備: 馬が快適に過ごせるように寝床環境を整えます。
• - 馬装: 鞍や頭絡などを正しく装着する作業です。
• - 運動管理: レースや調教の前後にウォーミングアップやクールダウンを実施します。
• - 馬体の洗浄: 競走馬を清潔に保ち、健康管理を行います。

かつては馬手や馬丁などの呼び方もありましたが、現在では厩務員として統一されています。

所属と仕組み

厩務員は中央競馬と地方競馬での取り扱いが異なります。

中央競馬

厩務員になるためには、競馬学校にて半年間の厩務員課程を修了する必要があります。その後、厩舎から雇用される形で働きます。中央競馬の厩務員は美浦トレーニングセンターや栗東トレーニングセンターに所属し、そこで競走馬の世話を担当します。彼らは担当馬の基本的な世話や手入れを行い、特定の資格を取得することで「調教厩務員」となり、一部の競走馬の調教も担当することができます。

地方競馬

地方競馬では、厩務員となるための特別な試験はありません。厩舎から直接雇用される形で勤務し、地方競馬教養センターでは厩務員の養成が行なわれています。

持ち乗り制度

中央競馬においては、調教を行える環境が整っており、特定の資格を持つ厩務員は自身が担当する馬に跨って調教を行うことができます。この制度は「持ち乗り制度」と呼ばれ、以下の点がメリットとされています。

• - 担当馬の運動時間を柔軟に調整できるため、全体としての調教量が増加する。
• - 厩務員が裁量を持って作業を行うことが可能になるため、競走馬の管理が合理的に進む。

一方、労働量が増加するため、業務過多のデメリットも存在します。また、持ち乗り厩務員が優遇されることで、一般の厩務員が疎外され、労働条件が悪化する恐れもあります。特に関西エリアでは1980年代にこの制度が導入されましたが、関東エリアでは労働組合の反発があり、導入が遅れました。結果、競走馬の成績に大きな差が生じる要因ともなりました。

行動制限

競馬法により、厩務員は勝馬投票券の購入が制限されています。2020年には高知県でこの法律に違反したとして厩務員が逮捕された事例もあります。

米国における厩務員の業務

米国においては、厩務員は「グルーム」と呼ばれ、業務が細分化されている点が特徴です。各スタッフは担当馬ではなく馬房が割り当てられるなど、日本の体系とは異なる運用がなされています。アシスタントトレーナーが調教師をサポートし、フォアマンが養飼料の調整を行う一方、グルームは馬房の清掃や手入れを担当します。レースに立ち会った際には報酬が支給されるものの、進上金は受け取れません。

結論

厩務員は競走馬の健康とパフォーマンスを支える重要な職業です。日本と米国ではその業務内容や職務体系に異なる特徴が見られるため、両者を理解することで競馬の背景をより深く知ることができます。

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