吉川ナス

吉川ナス

吉川ナス（よしかわナス）は、福井県鯖江市吉川地区で栽培されているナスの一種で、日本の地理的表示保護制度（GI）に登録されている伝統野菜です。

特徴

外観: 果実は濃い黒紫色で、美しい光沢を放ちます。茎は太く、ヘタはやや小さめです。茎葉やヘタには小さなトゲがありますが、それほど強くありません。
着果数: 一本の木から収穫できる果実の数は約40個と少なめです。
形状とサイズ: 球形から巾着形まで多様な形状があり、重さは約300g、直径は約10cm程度です。
果肉: 果皮は薄く、果肉はしっかりとして締まっており、緻密です。そのため、一般的なナスに比べて油を吸いにくい特徴があります。
調理: 煮崩れしにくいため、田楽や煮物などによく用いられます。
栽培: 草勢や耐病性が強く、トンネル早熟栽培と露地栽培の両方に適しています。
旬: 旬は7月から10月です。

歴史

吉川ナスは、福井県鯖江市吉川地区で古くから栽培されてきた丸ナスです。本格的な栽培は昭和17～18年頃に始まり、下川去町、石田町、田村町などで盛んに行われました。当時、化学肥料は高価だったため、川の氾濫で肥沃になった土壌を生かし、有機栽培に近い方法で栽培されていました。最盛期には、リヤカーいっぱいの吉川ナスが関西方面に出荷されるほどの人気を博しました。

しかし、栽培には高度な技術が必要であり、収穫量が少ないことなどから、農業の衰退とともに栽培農家や出荷量が減少していきました。平成20年頃には、栽培農家が市内で一軒のみとなり、継承が危ぶまれる状況となりました。

近年、市内農家の有志によって「伝統野菜等栽培研究会」が立ち上げられ、栽培者の育成とブランド化が進められています。定期的に栽培講習会が開催され、栽培技術の向上と生産量の増加が図られた結果、現在では約4万個の収穫量まで回復しています。

栽培方法

吉川ナスの栽培では、トルバムを台木として使用し、そこに吉川ナスを接ぎ木するのが一般的です。

定植時期: 4月下旬に定植を行います。
仕立て方: 発育が始まり、各葉の付け根から脇芽が出たら、樹勢を維持するために、最初の蕾（元なり）の下二本の枝だけを残し、それより下の枝は早めに掻き取ります。主枝と合わせて三本仕立てにします。
収穫時期: 収穫が遅れると色沢が悪くなり、皮も硬くなるため、早めの収穫を心がけることが重要です。
収穫期間: 6月から11月が収穫時期です。

名称の由来

丸ナスには「巾着」と「芹川」という種類があり、その系統に「吉川」という品種が存在します。名称は、この品種に由来するものか、あるいは大正時代から鯖江市旧吉川村で在来品種として栽培されていたことから、この地名に由来するものかは定かではありません。

脚注

日本の地理的表示保護制度（GI）登録産品の一つ

参考文献

「さばえ野菜の本」、応用芸術研究所／企画編集、2011年4月。
「ふくいの伝統野菜」、ふるさと野菜の会／編集、1998年10月1日
「吉川ナス美味しいレシピ」、鯖江市特産づくり応援室／監修、2012年

外部リンク

吉川ナス（登録番号第14号）:登録の公示・登録産品紹介 - 農林水産省[[地理的表示]保護制度登録産品](https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/14.html)

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