和田信賢

和田信賢（1912年 - 1952年）

和田信賢は、戦前から戦後にかけて日本放送協会（NHK）のアナウンサーとして活躍した人物です。彼は1912年に東京に生まれ、東京府立第五中学校と第二早稲田高等学院を経て早稲田大学に進学しましたが、途中で中退しました。1934年にNHKの第1期アナウンサーとして入局し、以降、彼の声は多くの人々に親しまれました。

彼の名を広めたのは、1939年の大相撲実況中継です。当時連勝記録を保持していた双葉山定次が、記録の70連勝をかけた取組で敗れた瞬間、和田はあまりの驚きから「双葉山は確かに負けましたね!?」と慌てて確認し、続いて「双葉敗る!」と叫び続けました。この実況は日本のテレビ史に残る名場面とされています。特に、「古希、古来稀なり」といった独特な語り口調や豊かな表現力から、和田の実況はしばしば「瞬間芸術」と評されました。

また、和田は1945年の終戦放送においても重要な役割を果たしました。彼は国民に向けて終戦の詔勅を朗読し、その瞬間も日本全体に影響を与えました。しかし、その後は転職等により一時的にNHKを離れることとなり、フリーアナウンサーとしての活動やNHKの嘱託として再び仕事を続けました。

戦後は、ラジオのクイズ番組『話の泉』の司会を務め、徳川夢声などの文化人を相手に巧みな対話を展開し、人気を博しました。この時期、和田は丸みのある温かい人柄を持つアナウンサーとして、多くのファンを魅了しました。1950年には中部日本放送の開局に際し、アナウンサー育成にも関わりました。

しかし、彼の人生は短命で、1952年にヘルシンキオリンピックの実況を終え帰国中、体調を崩しパリの病院で亡くなりました。彼の早世は多くの人に惜しまれ、NHKは和田の功績を讃えて「和田賞」を設立しました。

プライベートと交友関係

和田は私生活では酒好きで知られましたが、晩年には体調を崩しがちでした。特に腎盂炎を患い、この病気が最終的な死因となりました。彼の晩年は精神的な重圧と過度の飲酒が影響し、健康に害を及ぼしていました。

また、彼の妻は後輩アナウンサーの大島実枝子であり、二人の間には子どもが誕生しましたが、和田は彼女の妊娠中のことを知らずに亡くなりました。後に生まれた子どもは、1980年から1981年にNHKの『日曜美術館』の司会を務めていた藤堂かほるです。

和田信賢は、その高いアナウンス技術と個性的なキャラクターで多くの人に愛され、今でも多くの記憶に残る存在です。彼の生涯や功績は、NHKのアナウンサーたちの歴史において重要な位置を占めています。

もう一度検索