和裁

和裁：日本の伝統技法による着物仕立て

和裁とは、日本の伝統衣装である着物を仕立てる技術、そしてその行為そのものを指します。かつては日本の女性にとって必須の技術でしたが、現代ではその機会は減っています。この記事では、和裁の特徴、道具、工程、歴史的背景、そして現代における和裁の位置づけについて解説します。

洋裁との違い：和裁の特徴

和裁と洋裁の最大の違いは、型紙を使用しない点です。和服のパーツは基本的に長方形で構成されており、複雑な型紙は不要です。しかし、布目を丁寧に整え、正確な裁断を行う「地直し」が不可欠になります。

さらに、和裁は「ほどくことを前提」とした技術です。かつて着物は頻繁に洗い張りされ、その際に縫い目を解いて仕立て直すことが一般的でした。そのため、縫い代を十分に取り、縫い始めや縫い終わりは返し縫いで処理し、玉留めを極力避け、ほどきやすく仕上げます。子供服には肩揚げや腰揚げを施し、成長に合わせて調整できるように工夫されています。縫い代は切り落とさず、仕立て直しに備えます。

また、和裁はほとんど直線縫いで構成され、反物の耳（布端）を有効活用することで、布端始末の手間を省きます。そして、伝統的にはすべて手縫いで行われます。ミシン縫いはほどきにくく、布を傷める可能性があるためです。手縫いによる適度なゆるみが、着心地の良さにも繋がると言われています。ただし、近年ではウール着物や浴衣などにはミシン縫いも用いられるようになっています。

縫い目はできるだけ見せないよう、一方の布地を縫い目にかぶせる「きせをかける」技法や、両側から同じ幅できせをかける「毛抜き合わせ」が用いられます。

和裁道具：伝統と現代技術の融合

和裁には、独特の道具が用いられます。

裁ち板（裁ち台）: 反物を広げるための台。
くけ台、かけはり: 布を張るための道具。
へら、へら台（印台）: 印付け用の道具。近年はチャコも使用される。
和裁ごて: アイロンの役割を果たす道具。伝統的なものは火鉢などで加熱するが、電気式のものも存在する。
袖丸み型: 袖の丸みを作るための型板。
和針、待ち針、糸、はさみ、物差し、指貫、針箱: 洋裁と共通する道具だが、和裁特有の形状や素材のものもある。
* 反物: 着物を仕立てるための織物。幅や長さのバリエーションが豊富。

裁断：基本とバリエーション

裁断は、着物の種類や年齢によって方法が異なります。大人用の「本裁ち」、子供用の「中裁ち（四つ身など）」、「小裁ち（一つ身など）」があります。柄合わせや布地の傷などを考慮して、パーツの配置を変えることもあります。

寸法と名称：着物の重要な寸法

着物の寸法の中で最も重要なのは、着丈と裄丈です。女性用は「おはしょり」で調整できますが、男性用は「対丈」なので着丈が重要になります。その他、肩山、剣先、裾、背中心、褄先といった基準点に基づいて寸法を決定します。それぞれの寸法には、身丈、裄丈、衽下り、肩幅、繰越、袖口、袖丈、袖付、袖幅、抱幅などがあります。

和裁の技術と歴史：技能者と教育

高度な和裁技術を持つ技能者は、厚生労働省の「現代の名工」にも選ばれています。和裁の技術を学ぶことができる教育訓練施設としては、職業能力開発校、各種学校、専修学校などがあります。

現代における和裁

かつて日常的に行われていた和裁は、現代では専門家や愛好家によって受け継がれています。しかし、その伝統技術は、着物の仕立てだけでなく、古着の修復やリメイクなどにも活用され、新たな可能性を模索しています。和裁は、日本の伝統文化を象徴する重要な技術であり、今後もその技法と精神は受け継がれていくでしょう。

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