嘘つき解散

嘘つき解散とは

嘘つき解散（うそつきかいさん）は、1993年6月18日に実施された衆議院解散を指す言葉で、他にも自爆解散、無責任解散、造反解散などの別名でも知られています。この解散は当時の宮沢喜一首相による政策の約束と、その実現への道筋が阻まれた結果、引き起こされました。

経過

この事件の背景には、1993年5月31日に放送された特別番組『総理と語る』があります。この番組で、宮澤首相は「衆議院の選挙制度改革を実施すると公約したものの、党内の意見をまとめられず、約束を後回しにしたところ、野党が反発しました。その後、通常国会が閉幕する直前に、日本社会党、公明党、民社党が共同で内閣不信任決議案を提出します。

当初、この決議案は自民党の反対多数で否決されると思われていましたが、党内からの造反者が現れたことで可決に至りました。内閣不信任決議案の可決は、1980年以来の出来事であり、日本国憲法施行後では4回目のことでした。この流れの背景には、前年に当時の政治的派閥のリーダーである金丸信が逮捕されたことがあります。金丸の逮捕により、党内では権力争いが勃発し、派閥の分裂が進行ました。

党内抗争とその影響

金丸の穴を埋めるかのように、経世会のリーダーシップを巡る争いが勃発しました。小渕恵三や橋本龍太郎ら小渕派と、小沢一郎や羽田孜を中心とする羽田派との間で激しい対立が繰り広げられました。こうした内紛の結果、最終的には小渕が経世会の会長に就任しましたが、小沢らは小渕派から脱会し、羽田をリーダーとする改革フォーラム21を結成しました。

その結果、党内最大派閥である経世会は分裂し、小渕派は4番手、羽田派は5番手へと転落しました。次の人事でも宮澤が小渕派を優遇し、羽田派を冷遇したため、羽田派の反発が強まります。羽田派は「政治改革関連法案を通せ」と宮澤内閣に対して強く求めましたが、党内からの強い反対に遭い、結局その法案は廃案となりました。これに対し、羽田派は内閣不信任案に賛成票を投じました。

この決議案に賛成した羽田派の2人の閣僚は、その後辞表を提出し、宮澤内閣の信任を拒否しました。議会でこのように自党の内閣に対して不信任票を投じるのは異例の事態であり、その影響は重大でした。

解散と新たな政局

宮澤内閣は内閣不信任案が可決されたことを受けて、即座に衆議院を解散します。その際、議場は異常な雰囲気に包まれました。解散詔書が朗読される際に野党からの野次が飛び交い、議場には混乱が広がりました。解散の形式が通常通りではなく、万歳三唱が行われる隙を逸してしまうなど、異例の結末で幕を閉じました。

解散後、武村正義や田中秀征などの若手議員たちが自民党を離党し、新しい政党である新党さきがけを結成します。羽田や小沢は始め自民党に留まる意向でしたが、解散の流れを受けて新生党を結成しました。

最後の不信任決議

この「嘘つき解散」は、2024年現在において最後の内閣不信任決議案が可決された衆議院解散でもあり、結果的には政治の大きな転換を示す出来事となりました。自民党内での権力闘争や派閥の対立が、しばしば日本の政治に激動をもたらすことを象徴する出来事と言えるでしょう。

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