国際決済銀行

国際決済銀行（BIS）詳解：中央銀行の協調と金融システムの安定

国際決済銀行（BIS）は、1930年に設立された国際機関であり、中央銀行同士の決済業務を担うことから「中央銀行の中央銀行」とも呼ばれています。その主な目的は、通貨価値と金融システムの安定の維持です。中央銀行間の政策協調や国際協力を支援する役割を担い、各国中央銀行の外貨準備を運用する機関投資家としても活動しています。

歴史：賠償金から国際協調へ

BISの設立は、第一次世界大戦後のドイツの賠償金問題解決に端を発します。1924年のドーズ案、1930年のヤング案を経て、賠償金の支払いを円滑化するための機関として設立されました。当初は賠償金の取扱機関としての役割が期待されていましたが、世界恐慌やナチスの台頭により、その役割は限定的になり、中央銀行間の協力促進へとシフトしていきました。

設立当初、金預金の受け入れは行っていませんでしたが、1932年には受け入れる方針を表明し、各国中央銀行からの金塊預かり業務を開始しました。第二次世界大戦中は、資産をアメリカに避難させましたが、米財務省によって「敵性資産」として凍結される事態も発生しました。戦後は、ナチス関係者の関与が発覚し、一時廃止も検討されましたが、略奪金の返還問題の解決などを経て、1948年に存続が決定しました。

戦後、国際金融界への復帰を目指し、日本は1970年にBIS株主として復帰を果たしました。その後も、中央銀行間の会合開催や金融市場に関する委員会の事務局機能提供などを通じて、国際金融システムの安定化に大きく貢献してきました。

組織と運営

BISは、世界各国の中央銀行が出資する法人です。最高意思決定機関は総会で、理事会が運営方針を決定します。総支配人以下約600名の職員が日常業務を担っています。理事会は各国の中央銀行総裁や関係者で構成され、重要な政策決定や国際協調の推進を担っています。

主要な活動と委員会

BISは、金融システムの安定化に向けて様々な活動を行っています。主なものとして、以下の委員会が挙げられます。

バーゼル銀行監督委員会（バーゼル委員会、BCBS）：銀行監督の国際的な基準策定、強化を目指しています。バーゼル合意（バーゼル規制）は、この委員会がとりまとめた銀行の自己資本比率に関する指針です。バーゼルI、II、IIIと段階的に厳格化されており、銀行の健全性と安定性を確保するための重要な役割を果たしています。
グローバル金融システム委員会（CGFS）：国際金融市場の動向分析、市場機能の改善に焦点を当てています。
決済・市場インフラ委員会（CPMI）：支払・決済システムの健全性と効率性の向上を目指しています。
市場委員会：様々な金融市場の短期的な動向や市場構造の変化を分析しています。

これらの委員会は、世界各国の金融政策や金融システムの安定に多大な影響を与えています。

バーゼル合意（バーゼル規制）

バーゼル合意は、バーゼル委員会が策定した銀行監督に関する指針であり、銀行の自己資本比率に関する規定が中心です。バーゼルI、II、IIIと進化を続け、リスク管理の強化や自己資本の質の向上などが求められています。各バージョンは、国際的な銀行活動におけるリスク管理の進化を反映し、より厳格な規制へと移行しています。特にバーゼルIIIでは、世界金融危機後の反省を踏まえ、自己資本の質の向上やリスク管理の強化を重視し、より厳格な規制が導入されています。

BISの役割と重要性

BISは、単なる決済機関にとどまらず、国際的な金融協調の促進、金融システムの安定化に重要な役割を果たしています。各国中央銀行の連携強化、金融政策に関する情報共有、リスク管理に関する国際基準の策定などを通じて、グローバルな金融システムの安定に大きく貢献しています。現代の複雑化する国際金融市場において、BISの役割はますます重要性を増しています。

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