ヤング案

ヤング案とは：第一次世界大戦後の賠償問題と世界恐慌

ヤング案（Young Plan）は、第一次世界大戦後のドイツに対する賠償問題を解決するために、1929年に策定された新たな賠償計画です。1924年に成立したドーズ案によるドイツの負担をさらに緩和する目的で、アメリカのオーウェン・D・ヤングを委員長とする委員会によって作成されました。

しかし、このヤング案の発効は、結果的に世界恐慌へとつながる要因の一つとなりました。賠償問題はその後も複雑な経緯を辿り、1932年のローザンヌ会議で賠償金は大幅に減額されましたが、翌年にはナチスによって支払いが一方的に拒否されるという事態となりました。

ヤング案の背景と意義

ヤング案は、ドーズ案で一旦白紙とされた賠償総額を358億1400万ライヒスマルクと定め、ドイツは1988年までの59年間、年賦で支払うこととしました。この計画は、ヨーロッパの戦勝国が復興のためにアメリカから輸入した支払いを、ドイツへの賠償債権を裏付けとするものでした。しかし、この仕組みは世界経済に大きな影響を与え、世界恐慌の引き金の一つとなりました。

ヤング案の策定には、日本からも森賢吾とトーマス・ラモントが代表として参加しました。委員会での交渉は難航し、特に東方賠償問題は二度のハーグ会議でも進展が見られませんでした。しかし、最終的には五カ国（日本、イギリス、フランス、イタリア、ベルギー）が妥協案を提示し、紛争の解決に向けて動きました。

ヤング案の内容

ヤング案では、ドイツは毎年、利子とドーズ債の元本支払を含めた平均20億5千万ライヒスマルク相当を外貨で支払うこととされました。実際の支払いは遅延し、ローザンヌ会議で賠償債務は減額されました。

日本は賠償金を受け取る国の一つであり、当初は年間1250万ライヒスマルクの支払いを受ける権利を持っていましたが、サンフランシスコ平和条約で対独賠償請求を放棄しました。賠償金の分配機関として国際決済銀行が創設され、日本銀行も株主として認められました。

ヤング案への反発と国内情勢

ドイツ国内では、ヤング案に対して強い反発がありました。アルフレート・フーゲンベルク率いる国家人民党やナチ党などは、「ドイツ国民奴隷化法」だと非難し、反ヤング案闘争を展開しました。しかし、国民投票の結果、圧倒的多数の賛成によりヤング案は批准されました。

世界恐慌とバルカン半島の動向

世界恐慌は、ヴェルサイユ体制を動揺させました。バルカン半島の諸国は、自律を志向するようになり、列強の利権が交錯する状況が生まれました。1934年には、バルカン友好同盟が組織され、ヨーロッパの情勢はさらに複雑化しました。

オプタン・オングロア問題

オプタン・オングロア問題とは、第一次世界大戦後の東欧諸国における農地改革と、それに対するハンガリーの主張に関する紛争です。この問題は長らく解決されず、二度のハーグ会議でも膠着状態が続きましたが、ヤング案策定の過程で、五カ国が妥協案を提示することで進展しました。

ヤング案と東方賠償問題の進展

1930年1月のハーグ会議では、東方賠償問題の進展が見られ、いくつかの協定が成立しました。オーストリアの賠償債務の免除や、ブルガリア、チェコスロバキアとの協定などが結ばれました。これらの協定は、ヤング案と不可分の関係にありました。

戦後の債務問題と解決

ナチスは第二次世界大戦で敗北しましたが、戦中の対外債務は返済されず、1953年のロンドン債務協定で減免されました。ヤング案の賠償金も減額され、未払い利息も免除されました。しかし、アメリカへの戦債は解消されないままで、ドイツ再統一後に利子の支払いを再開し、2010年にようやく完済しました。他国への債務は2020年まで残っていたという状況でした。

ヤング案は、第一次世界大戦後の国際関係や経済に大きな影響を与え、その後の世界情勢にも深く関わる重要な出来事でした。

ヤング案関連の外部リンク

• - 対独賠償問題の経過と新案の概要

もう一度検索