垂秀夫

埀秀夫：日中関係の懸け橋、そして写真家

埀秀夫氏は、日本の外務省キャリア官僚として、長く中国に関わる外交活動に携わってきた人物です。1961年生まれ。京都大学法学部卒業後、1985年に外務省に入省。その後、中国語研修などを通して中国への深い理解を培い、中国、香港、台湾と中華圏を舞台に外交官としてのキャリアを築きました。

中華圏でのキャリアと対中強硬派

埀氏のキャリアは、中華圏での勤務が中心となっています。在香港日本国総領事館、日本台湾交流協会台北事務所、そして在中華人民共和国日本国大使館など、重要なポストを歴任。特に、日台断交後初めてとなる台湾勤務を2度経験したことは特筆すべき点です。中国共産党内にも人脈を持つ一方で、チャイナ・スクール出身者としては異例ともいえる対中強硬派として知られています。

尖閣諸島問題や日米関係における発言

埀氏は、日中関係における重要な局面で重要な役割を果たしました。2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件では、当時の菅内閣の対応を批判し、強硬な姿勢を示したとされています。また、2020年に駐中国大使に就任後も、尖閣諸島が日本固有の領土であることを明確に主張するなど、中国への毅然とした外交姿勢を貫きました。日米「2＋2」会合での中国批判にも対し、中国側に臆することなく反論しています。安倍元首相の台湾に関する発言に対しては、政府を離れた個人の発言として政府はコメントできないとしつつも、中国側の一方的な主張を明確に拒否しました。日中国交正常化50周年においては、相互理解や信頼関係の不足を率直に指摘し、中国側に注文を付けるなど、従来の外交慣例にとらわれない発言で注目を集めました。福島第一原発処理水の海洋放出問題でも、科学的根拠に基づいた日本の対応を主張し、中国側の批判に反論しました。さらに、中国で拘束された日本人社員と面会したことは、人道的配慮と外交努力の両面から高く評価できます。

スパイ疑惑と異例の経歴

埀氏は、中国滞在中にスパイ容疑をかけられたという異例な経歴も持ちます。環球時報による名指し報道は、中国政府による圧力や警戒感を示唆しており、その後、中国から急遽帰国したと見られています。こうした経験が、埀氏の対中姿勢に影響を与えている可能性も考えられます。

写真家としての活動

外交官としての活動の傍ら、埀氏は風景写真家としても才能を発揮しています。数々の写真展で受賞歴があり、2018年には台湾で個展を開催するなど、芸術分野でも活躍しています。

経歴

1961年 大阪府生まれ
京都大学法学部卒業
1985年 外務省入省
在香港日本国総領事館領事
日本台湾交流協会台北事務所総務部長
在中華人民共和国日本国大使館公使
外務省領事局長
外務省大臣官房長
在中華人民共和国日本国特命全権大使
2024年5月9日 台湾より大綬景星勲章を受章

結論

埀秀夫氏は、対中強硬派として知られる一方で、日中関係の改善にも尽力してきた外交官です。中国への深い理解と、毅然とした外交姿勢を併せ持つ稀有な存在と言えるでしょう。また、写真家としての活動も、その多様な才能の一端を示しています。彼の経歴は、現代の日中関係、そして日台関係を理解する上で貴重な示唆を与えてくれます。 彼の経験や、率直な発言は、今後の日中関係、ひいては東アジア情勢に影響を与える可能性があり、引き続き注目していく必要があるでしょう。

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