外道坊

外道坊：宿命を背負った破戒僧の物語

平松伸二氏による漫画『外道坊』は、2006年から2009年にかけて『週刊漫画ゴラク』で連載された作品です。キャッチコピーは「運命を変えるスピリチュアル・マーダー!!」。『週刊少年ジャンプ』で連載された『キララ』以来、約20年ぶりの週刊連載作品となり、大きな話題を呼びました。

物語の中心人物は、主人公の外道坊です。僧号は雲空、本名は清春。彼は、人の前世やオーラ、霊体を見る能力を持っており、この能力ゆえに少年時代に母と共に村人から迫害を受け、母を亡くすという悲劇を経験しています。

正義のため、仏の道を捨て「外道」を名乗る彼は、全国を行脚しながら殺された者の無念の声を聞き、悪事を働く「業人」を抹殺する「スピリチュアル・マーダー」として活動します。前世を見る能力で、その人物が背負う業と、未来の運命を知り、「悪人となる運命」にある者を見極めて始末していきます。しかし、外道坊自身も「必ずしも人間は前世通りの運命を辿るとは限らない」と考えており、運命を変える可能性を秘めた者にも目を向けます。

外道坊は、人間に取りついた悪霊をアザとして視覚化し、その急所を突くことで悪霊を払う技も持ち合わせていますが、救いようのない悪人には容赦なく殺害します。また、犠牲になった者の魂を一時的に実体化させ、その魂の力を借りて業人を糾弾したり、近しい者を助けたりすることもあります。時には、他者に最悪の未来を見せ、「今ならまだ間に合う」と行動を促すこともあります。

外道坊の過去には、師匠である雲海との出会いがあります。崖から落ちた外道坊を救い、雲空という僧号を与え弟子とした雲海ですが、改心させたはずの強盗犯が再び凶行に及んだことを目の当たりにした外道坊は、仏の道を捨て、外道坊として生きることを決意します。

物語の中盤からは、『マーダーライセンス牙』の主人公、木葉優児（牙）が登場します。木葉は、外道坊から「前世の業により、実父である板垣総理大臣を死に至らしめる運命にある」と告げられ、運命を変えるべく外道坊と共闘します。板垣総理大臣は、強い正義感を持つ理想的な人物ですが、物語の中で怨霊の悪影響を受けたり、人間的な弱さを見せたりするなど、複雑な一面が描かれています。

作品には、『ブラック・エンジェルズ』の主人公、雪藤洋士も登場します。法で裁けない外道を地獄に落とす「ブラック・エンジェルズ」の一員である雪藤は、気弱な青年と冷徹な暗殺者の二つの顔を持つ人物です。

物語終盤では、外道坊は指名手配され、師匠の雲海と再会を果たしますが、決別することになります。母の仇である白州山を始末しようとする外道坊ですが、雲海の霊の説得により、一度は刀を収めます。しかし、白州山の反省の無さから再び対決し、最後は白州山を抹殺します。そして、修羅の道を歩み続けることを決意し、物語は幕を閉じます。

外道坊は、刀を仕込んだ錫杖や刃を仕込んだ網代笠を武器として使い、「南無阿弥陀仏」と叫びながら悪と戦います。その姿は、正義と悪の狭間で揺れ動く、人間的な葛藤と悲しみに満ちたものでした。

2011年には、実写版DVD『外道坊』『外道坊2』がリリースされ、小沢仁志氏が外道坊を演じるなど、多くのファンを熱狂させました。

『外道坊』は、スピリチュアルな要素とハードボイルドなアクション、そして人間の業と運命といった深いテーマが絡み合った、唯一無二の作品と言えるでしょう。個性豊かな登場人物たちの複雑な人間関係や、衝撃的な展開の数々は、読者に強い印象を与え続けることでしょう。

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