夢よもう一度

トムとジェリー『夢よもう一度』：悪夢と現実の狭間で繰り広げられるドタバタ劇

1967年公開の『夢よもう一度』(Purr-Chance to Dream)は、トムとジェリーシリーズの中でも傑作として知られるチャック・ジョーンズ監督作品です。この作品は、ハンナ・バーベラ制作のトムとジェリー短編アニメーションの最終作であり、第1期の最後を飾るにふさわしい、独特の面白さと奥行きを持った作品となっています。

夢と現実の狭間

物語は、いつものようにジェリーを追いかけるトムから始まります。ところが、そこに現れたのは巨大なブルドッグ。トムはブルドッグに襲われ、地面に打ち込まれてしまうという悪夢を見ます。

目が覚めたトムは安堵しますが、すぐにジェリーにからかわれ、追いかけることに。今度は巨大な犬小屋を発見し、先ほどの悪夢を思い出したトムは隠れます。しかし、犬小屋から出てきたのは、小さなブルドッグ。トムはこれを簡単にあしらってジェリーを捕まえようとしますが、逆にブルドッグに捕まり、悪夢と同じように地面に埋められてしまうのです。

ブルドッグとジェリーの意外な友情

小さなブルドッグは、ジェリーと仲良くなり、トムからジェリーを守るボディガードのような存在になります。しかし、ブルドッグの餌のために食糧を荒らされるトムは、ブルドッグとジェリーを引き離す作戦を実行します。ノミ取りスプレーをブルドッグにかけたり、手榴弾入りの骨をあげたり、金庫に閉じ込めたりと様々な手段を試みますが、どれも失敗に終わってしまいます。

諦めと新たな夢

ついにトムは諦め、ジャズレコードをかけ、睡眠薬を飲んで眠りにつきます。そして、夢の中で、今度はあの巨大なブルドッグに殴られても、平然と微笑むのでした。現実ではブルドッグに翻弄されたトムですが、夢の中では、まるでブルドッグとの関係を受け入れたかのような穏やかな表情を見せています。

各キャラクターの描写

トム：自身の小ささを過信し、ブルドッグを軽く見ていたトムは、現実ではブルドッグに徹底的にやられ、最後は現実逃避を選択する。

ジェリー：ブルドッグと協力し、トムから身を守られる。思わぬ味方を得たジェリーは、トムとのいたちごっこを、これまでとは違った形で楽しむことになる。

ブルドッグ：ジェリーのボディガードとして、トムを圧倒的な力で打ち負かす。ノミ取りスプレー、手榴弾入りの骨、金庫への監禁など、トムのあらゆる攻撃をものともしない。

巨大ブルドッグ：トムの悪夢に登場する巨大なブルドッグ。その姿は、小さなブルドッグと瓜二つである。

作品全体の考察

この作品は、悪夢と現実が複雑に絡み合い、コミカルでありながらも、どこか哲学的な深みを感じさせる作品です。トムの現実逃避とも取れる最後のシーンは、視聴者に様々な解釈を促し、余韻を残します。チャック・ジョーンズ監督ならではの、独特なユーモアと視覚的な演出が光る、トムとジェリーシリーズの中でも特に記憶に残る一作と言えるでしょう。

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