大手饅頭伊部屋

株式会社大手饅頭伊部屋（おおてまんじゅういんべや）は、日本の岡山県岡山市に本社を置く、長い歴史と伝統を誇る和菓子の製造・販売企業です。特に、その主力商品である「大手まんぢゅう」は、同社の代名詞ともいえる存在で、岡山を代表する銘菓として広く親しまれています。

沿革

同社の創業は江戸時代後期の天保8年、西暦1837年に遡ります。当時の岡山城下町の中心部にほど近い、現在の岡山市北区京橋町に、伊部屋永吉氏が「伊部屋」という屋号で店を構えたのが始まりと伝えられています。創業の地が岡山城の正門である大手門のすぐ近くにあったことが、後の主力商品と社名に大きな影響を与えました。

店の饅頭が評判となり、ある時、当時の岡山藩主がこの饅頭に目を留めたと言われています。藩主は、店の場所が大手門のそばであることにちなみ、この饅頭に「大手まんぢゅう」と名付けたとされています。藩主であった池田家のお茶会では、備前焼（伊部焼）の茶器とともに必ずこの大手まんぢゅうが供されるほど重宝されました。これにより、大手まんぢゅうは岡山藩内で特別な存在となり、やがて「備前名物」として広く知られるようになりました。大手まんぢゅうの名声が高まるにつれて、店の屋号も「大手饅頭」を冠するようになり、現在の社名である株式会社大手饅頭伊部屋へと繋がっています。

事業所

現在、同社は岡山市内に主要な拠点を置いています。

本店：創業の地である岡山市北区京橋町に位置します。歴史的な雰囲気を残しており、直売店舗としての機能が中心です。
雄町工場：岡山市中区雄町にあります。製造工場としての機能に加え、実質的な本社機能も備えています。この工場は、環境省の選定した「名水百選」にも選ばれている「雄町の冷泉」を和菓子製造に使用するために建設されました。清らかな名水を用いることで、製品の品質維持・向上に努めています。

このほかにも、岡山市内を中心に、岡山県内の主要な場所や百貨店などに複数の直売所や取扱店を展開し、消費者が大手まんぢゅうをはじめとする同社の製品を購入できるようになっています。

商品ラインナップ

同社は伝統的な製法に基づいた和菓子を製造・販売しています。主要な商品は以下の通りです。

大手まんぢゅう：同社の看板商品であり、滑らかなこし餡を薄く焼き上げた皮で丁寧に包んだ饅頭です。シンプルながらも上品な甘さと風味で、長年にわたり多くの人々に愛されています。
もなみ：餡を挟んだ最中です。
つぶぞろい：餡と求肥を組み合わせた菓子です。
水羊羹：夏季限定で販売される涼やかな和菓子です。

これらの商品の中で、売上の大半を占めるのはやはり「大手まんぢゅう」です。直近のデータによれば、売上構成比は大手まんぢゅうが約90%を占めており、次いでもなみが約9%、つぶぞろいが約1%となっています。この数字からも、大手まんぢゅうが同社の事業において圧倒的に重要な位置を占めていることが分かります。

特徴と評価

株式会社大手饅頭伊部屋は、180年以上にわたる長い歴史を通じて培われた伝統の技と味を守り続けています。岡山藩主にも愛されたという由緒ある大手まんぢゅうは、単なる菓子にとどまらず、岡山の歴史や文化、人々の暮らしと深く結びついた地域を代表する銘菓としての地位を確立しています。名水である「雄町の冷泉」を製造に用いるなど、品質へのこだわりも同社の強みの一つです。主力商品に特化することで、その品質とブランド力を盤石なものにしています。現代においても、公式ウェブサイトやFacebook、X（旧Twitter）、Instagram、Threadsといった各種ソーシャルメディアを通じて情報発信を行い、多くのファンとの交流を深めています。

岡山を訪れる多くの人々にとって、大手まんぢゅうは欠かせない土産物であり、地元の人々にとっては日常的に親しまれる菓子となっています。その変わらぬ美味しさと伝統は、これからも多くの人々に受け継がれていくことでしょう。

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