天然ウラン

天然ウラン：資源から核燃料へ

天然ウランは、地球上に存在するウラン資源を広く指す言葉ですが、文脈によってはウラン金属やその化合物（酸化物、フッ化物など）を指すこともあります。特に濃縮ウランや劣化ウランと対比して用いられる際には、後者の意味で用いられることが多いです。

ウランの同位体と用途

天然ウランは、質量数238のウラン238と質量数235のウラン235という2つの主要な同位体から構成されています。約99.3％を占めるウラン238は核分裂を起こしにくい一方、残りの約0.7％を占めるウラン235は核分裂性の放射性同位体であり、原子力発電所の核燃料や核兵器の主要材料として利用されます。

現在、世界の原子力発電の主流は軽水炉であり、軽水炉で利用するためには、天然ウラン中のウラン235の比率を高める濃縮処理が必要となります。この濃縮処理を経たウランを濃縮ウランと呼び、濃縮されていないウランを天然ウランと区別します。

ウラン資源の分布と産出国

ウランは地球の地殻や海水中に広く分布しており、その埋蔵量は銀の40倍、スズと同程度と推定されています。2007年の試算では、確認可採埋蔵量は547万トンと推定され、主な産出国はオーストラリア、カザフスタン、カナダ、南アフリカ、アメリカ合衆国などです。北朝鮮にも豊富な埋蔵量があると推定されていますが、正確な数値は不明です。日本国内にもウラン鉱床が存在しましたが、資源量が少なく開発には至っていません。そのため、日本の原子力発電所は、ウランをすべて海外から輸入しています。

ウランの粗精錬：イエローケーキの製造

ウラン鉱石には、閃ウラン鉱、ピッチブレンド、コフィン石など様々な種類があります。これらの鉱石は粉砕され、硫酸などを使ってウランを溶解し、浸出液を得ます。この浸出液から、溶媒抽出法やイオン交換法などの化学的手法を用いて不純物を除去し、ウラン濃度を60％程度まで高めたウラン精鉱を製造します。このウラン精鉱が、一般にイエローケーキと呼ばれています。

イエローケーキは重[ウラン]]酸ナトリウム、重ウラン酸アンモニウム、含水四酸化ウランなどの混合物であり、必ずしも黄色ではなく、オレンジ色から緑色、茶褐色まで色合いは様々です。歴史的に最初の精錬工程で作られたウラン精鉱が鮮やかな黄色だったため、イエローケーキと呼ばれています。イエローケーキはドラム缶に詰められ、次の工程である転換工場へ送られます。国際取引では、イエローケーキ中のウランを八酸化三[[ウラン]に換算して価格が決定されます。

ウランの転換：六フッ化ウランの製造

イエローケーキを原料として六フッ化[ウラン]を製造する工程を転換と呼びます。この工程では、イエローケーキを硝酸で溶解し、不純物を除去した後、脱硝により三酸化ウランを生成します。さらに、水素を用いて二酸化ウランに還元し、フッ化水素と反応させて四フッ化ウランを製造。最後に、フッ素と反応させて六フッ化ウランが生成されます。六フッ化ウランは、濃縮工場へ送られます。

ウランの濃縮：ウラン235濃度の向上

転換工場で製造された六フッ化ウランは、濃縮工場でウラン235の比率を高める濃縮処理を受けます。この工程には、ガス拡散法や遠心分離法などの方法が用いられます。濃縮処理によってウラン235の比率を高めたウランを濃縮ウランと呼びます。

燃料加工：燃料ペレットの製造

濃縮[ウラン]]は、再転換工場で二酸化[[ウラン]粉末に変換され、燃料ペレットに加工されます。このペレットはジルカロイなどの合金でできた被覆管に封入され、さらに燃料集合体として組み立てられます。

イエローケーキの保障措置と輸送事故

従来、イエローケーキは[国際原子力機関]の保障措置の対象外でしたが、イラクの核兵器開発疑惑などを背景に追加議定書が発効した結果、取扱量が10トンを超える場合は査察の対象となりました。また、1977年にはアメリカでイエローケーキを積んだトレーラーが事故を起こし、大量のイエローケーキが漏洩するという事故も発生しています。

日本の状況

日本はウラン資源に乏しいため、原子力発電に必要なウランをすべて輸入に頼っています。そのため、安定的なウラン供給の確保が重要な課題となっています。

もう一度検索