奈良原一高

奈良原一高の生涯と業績

奈良原一高（ならはら いっこう）は、1931年11月3日に日本の大牟田で誕生しました。本名は楢原であり、父親の職業が判事であったことから、幼少期は日本各地を転々としました。特に3歳から6歳までの期間は長崎で過ごしました。1950年に島根県立松江高校を卒業し、以後は中央大学法学部を経て早稲田大学大学院で美術史を学びました。

彼の芸術的なキャリアは、1955年に池田満寿夫や靉嘔らと共に結成した前衛美術グループ「実在者」への参加により始まりました。特に、桜島の黒神村や長崎の端島（軍艦島）の取材を通じて人々の生活に興味を持ち、その際の体験が彼の作品に大きな影響を及ぼします。1956年に開催した初個展「人間の土地」は大きな話題を呼び、彼は写真家としての道を切り開くこととなりました。

以後、1958年に「王国」という個展を開き、日本写真批評家協会賞新人賞を受賞。その後も、1959年には東松照明や細江英公らと共にセルフ・エージェンシー「VIVO」を結成し、1961年に解散するまで様々な活動を展開しました。

奈良原の作品は、特に彼の受賞歴で顕著です。1967年には「ヨーロッパ・静止した時間」を発表し、日本写真批評家協会賞作家賞、芸術選奨文部大臣賞、そして毎日芸術賞を受賞。この業績は彼の名を国内外に知らしめました。また1986年に「ヴェネツィアの夜」で日本写真協会年度賞を受賞し、1987年には東川賞国内作家賞を受賞しています。さらに、1996年に紫綬褒章、2006年には旭日小綬章を受けるなど、彼の評価は時と共に高まり続けました。

彼の写真集も多く、特に『人間の土地』の個展図録（1956年）や『ヨーロッパ・静止した時間』（1967年）などが特に有名です。他にも『スペイン・偉大なる午後』や『王国』など、彼の作品は多岐にわたります。2002年にはパリ写真美術館、2004年には東京都写真美術館での回顧展が開催されるなど、国際的にも高く評価されています。

彼は2020年1月19日、東京都世田谷区の介護施設にて心不全により88歳の生涯を閉じました。彼の作品や記録は、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

代表的な刊行作品

• - 『人間の土地』(1956)
• - 『ヨーロッパ・静止した時間』(1967)
• - 『王国』(1971)
• - 『ヴェネツィアの夜』(1985)
• - 『日本の写真家31 奈良原一高』(1997)

参考文献

• - 『手のなかの空　奈良原一高　1954-2004』(2010)
• - 『奈良原一高 王国』(2014)
• - 『奈良原一高のスペイン 約束の旅』(2019)

彼の作品は、写真芸術の枠を超え、見る者に深いメッセージを届け続けています。

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