奈良豆比古神社

奈良豆比古神社：悠久の歴史と自然が息づく古社

奈良県奈良市きたまちに位置する奈良豆比古神社は、長い歴史と豊かな自然に抱かれた神社です。かつては奈良坂春日社、春日社、八幡社といった様々な呼び名で親しまれてきました。式内社「大和国添上郡奈良豆比古神社」の後裔社とされ、天理市の楢神社も同社の後裔社とする説があるものの、有力視はされていません。

祀られている神々

奈良豆比古神社では、複数の神々が祀られています。主祭神は平城津比古大神（当地の産土神、奈良豆比古神とも呼ばれる）で、中殿に祀られています。左殿には春日宮天皇（施基親王、志貴皇子、田原天皇とも呼ばれる）、右殿には春日王（志貴皇子の息子）が祀られています。一方で、『式内社考』では、中殿に南良春日宮大神（奈良豆比古神）、左殿に春日若宮（天押雲根命）、右殿に矢幡大神（施基親王）と記されています。このように、祭神に関して複数の説が存在することが興味深い点です。

歴史と伝承

神社のある地は、光仁天皇の父である施基親王が病気療養のため隠棲していた奈良山春日離宮跡と伝えられています。宝亀2年（771年）、施基親王を祀ることを契機に創建されたとされています。境内にはかつて「佐保神石」と呼ばれる神石が存在していました。

戦時中も氏子たちによって20年毎の御造替が欠かさず行われ、「奈良阪の氏神さん」として地域の人々に深く愛されてきました。その信仰の厚さは、神社の歴史と人々の生活とが深く結びついていることを示しています。

境内にある巨樹

神社の境内には、自然の力強さを感じさせる巨樹が存在します。本殿裏境内地には、樹齢1000年以上と推定される樟の巨樹が自生しています。その大きさは、幹囲が土際で約12.8m、目通りで約7.5m、樹高約30m、枝張り約20mにも及びます。地上約7mで南北に2分岐し、さらに枝分かれしているその姿は圧巻です。1951年と1977年に奈良県の天然記念物に指定され、1200年前の伝説、「田原天皇の子、田原太子（春日王）が療養のため、大木茂る平城山の一社（当社）に隠居した」という伝承を裏付ける存在となっています。

また、かつては巨大な児の手柏（万葉の樹）がありましたが、昭和27年（1952年）に枯れてしまいました。小清水卓二氏によると、その樹齢は1300年にも及ぶと推定されました。これらの巨樹は、神社の歴史の長さと、自然の息吹を感じさせてくれる貴重な存在です。

重要な祭事

奈良豆比古神社では、毎年10月8日夜に秋の例祭の宵宮として「翁舞」が奉納されます。これは町内の翁講中によって行われる伝統芸能で、平成12年（2000年）12月27日に重要無形民俗文化財に指定されました。この翁舞は、神社の長い歴史と、地域文化の継承を象徴する重要な行事です。

文化財

神社には、重要文化財に指定されている木造能面も所蔵されています。これは、応永20年2月、千種（ちぐさ）作、千草左衛門大夫作の刻銘がある貴重な文化財です。

周辺環境

奈良豆比古神社は、歴史的な寺院である西福寺に隣接しており、周辺には歴史的な建造物や自然が多く残されています。古都奈良の豊かな歴史と文化に触れることができる立地にあると言えるでしょう。

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