奥野卓司

奥野卓司：情報人類学と鵜飼文化保護の両輪を駆ける研究者

奥野卓司氏は1950年京都府京都市生まれ。京都市立堀川高等学校、京都工芸繊維大学を経て、1978年に同大学大学院修士課程を修了。2001年には同大学より博士号を取得しました。専門は情報人類学と人間動物関係学。学術研究と社会貢献の両面で顕著な功績を残す、日本を代表する人類学者の一人です。

学術研究の足跡

奥野氏の研究キャリアは、京都芸術短期大学芸術文化研究所での専任講師、助教授から始まりました。その後、米国イリノイ大学客員准教授、甲南大学文学部助教授を経て、1994年に甲南大学文学部教授に就任。1997年には関西学院大学社会学部教授に転じ、長年に渡り教育・研究活動に従事しました。2021年に関西学院大学を定年退職後も、名誉教授として大学に貢献し続けています。

その間、国際日本文化研究センター客員教授、関西学院大学総合図書館長、放送大学大学院客員教授、京都市美術館学術顧問、京都市動物園学術顧問などを歴任。幅広い分野で活躍し、その専門知識を活かした活動は、社会に大きな影響を与えました。また、ヒトと動物の関係学会副会長、生き物文化誌学会理事なども務め、学術界への貢献も多大です。現在も公益財団法人山階鳥類研究所シニアフェロー、理事、公益財団法人千里文化財団（国立民族学博物館運営）理事として活躍しています。

奥野氏の研究は、情報化社会における人間行動や、人間と動物の関係性、さらに日本の伝統文化など多岐に渡ります。代表的な著書として、『パソコン少年のコスモロジー―情報の文化人類学』、『情報人類学 サルがコンピュータをつくった理由』、『第三の社会　ビジネス・家族・社会が変わる』、『人間・動物・機械―テクアニミズム』などがあり、これらは情報人類学の分野において重要な位置を占めています。これらの著作を通して、奥野氏は情報技術の進歩が社会や文化に与える影響、人と動物の共存関係、そして日本の伝統文化の新たな解釈などを提示し続けています。

鵜飼文化保護への貢献

奥野氏の活動は学術研究にとどまりません。2017年、嵐山通船における鵜の大量死を機に、鵜飼文化の衰退を危惧した奥野氏は、一般社団法人「嵐山鵜飼観光文化振興協会」の設立に尽力しました。同協会では副理事長、後に理事長として、感染症対策を強化した鵜小屋の建設など、鵜飼文化の存続に向けた具体的な行動を起こしました。

2023年には、嵐山通船の主張に沿った記事を掲載した週刊誌を名誉棄損で訴訟。2024年6月、神戸地方裁判所は奥野氏の主張を全面的に認め、週刊誌への謝罪と損害賠償が確定しました。この判決は、鵜飼文化の保護活動における奥野氏の取り組みの正当性を示すものとなりました。

まとめ

奥野卓司氏の生涯は、学術研究と社会貢献の両立を示す優れた事例と言えるでしょう。情報人類学の第一人者としての豊富な知識と経験、そして、社会問題への鋭い洞察力と行動力は、未来世代への大きな遺産となるに違いありません。今後の活動にも期待がかかります。

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