女犯坊

『女犯坊』：時代を駆け抜ける怪僧の物語

『女犯坊』（にょはんぼう）は、ふくしま政美が作画を、滝沢解と坂本六有が原作を担当した、成人漫画作品です。仏教用語である「女犯（にょぼん）」を題材に、タブーを犯す僧侶の破天荒な活躍が描かれています。作中では「にょはん」と統一して読まれています。

作品概要

本作は、1974年から1976年にかけて『漫画エロトピア』で連載されました。主人公である怪僧「竜水」が、江戸末期から明治初期にかけての動乱期を舞台に、その強大な力と独自の哲学を武器に、社会を翻弄する物語です。長らく絶版となっていましたが、太田出版から復刻版が刊行され、その後電子書籍化もされたことで、比較的容易に入手できるようになりました。

2006年には、笠倉出版社の『超劇画浪漫』で復活を遂げました。その後、掲載誌は『劇画ぴかれすく』と改名されましたが、3号の発刊を待たずして休刊となりました。その後、『週刊漫画サンデー』にて新連載として再復活し、2007年11月から2008年12月まで連載されました。サンデー版では現代が舞台となっています。滝沢解氏の逝去後、原作はふくしま政美氏とコンビを組んだ坂本六有氏が担当しています。

作品の評価

作品の性質上、脚色や誇張が非常に多いですが、その荒唐無稽さから娯楽作品として高い評価を得ています。特に、その独特な世界観と破天荒な展開は、多くのマニアを魅了し、怪作としてカルト的な人気を誇っています。

エロトピア版の内容

ストーリー

物語は、寛政八年、女犯の罪で晒される僧侶たちの姿から始まります。主人公の竜水は、権力と戒律の癒着を嘲笑し、独自の哲学に基づき、宗教界や政界を蹂躙していきます。高僧はおろか、権力者、海外の魔人、そして妖怪や死すらも彼の前では無力です。

竜水のセリフである「これが女犯道　おれの世直しだあ!!」「ゆくぞ岩松　この世にはびこる悪をぶち殺すのだ!」は、彼の破天荒な性格を象徴しています。

登場人物

竜水：偽経「女犯経」を掲げる怪僧。強靭な肉体と強大な自我を持ち、欲望のままに生きます。性力、腕力ともに並ぶ者がおらず、薬物にも精通しており、媚薬や毒薬を製造します。弁舌も巧みで政治的な駆け引きも難なくこなし、超能力をも使いこなします。仏教界、大奥、幕府、キリシタン、そして明治政府までも手玉に取り、女犯の極みを尽くします。信仰の根本は観音経にあるようで、これを唱えている姿がよく見られます。
岩松：竜水の侍従で、背むしの小男。重度の死体愛好家（ネクロフィリア）です。竜水の手足となって暗躍しますが、竜水の予測不能な行動に困惑することもしばしばです。
姫小路：大奥を牛耳る大上臈。醜い老婆ですが、性欲と狡猾さは衰えを知りません。竜水と組んで幕府を操りますが、立場上狙われることも多く、視力や手足を失います。最期は、竜水と結ばれることだけを夢見ていました。実在の上臈姉小路がモデルです。
井伊直弼：竜水と対立する大老。竜水の命を狙いますが、毎回失敗に終わります。最終的には竜水に逆襲され、史実通り桜田門外で暗殺されます。
覆面の男：覆面をつけた西洋人。竜水以上の巨根の持ち主で、女性を性器で殺害し、その体に剣で「Z」型の傷をつけます。
ブーリバ：竜水に匹敵する巨体と性力を持つ韃靼人。女性の脳を食らう悪癖があります。竜水に一度は勝利しますが…。
モルガンお雪：史実とは異なり、非常に大柄で毛深く描かれています。その巨体と性欲を持て余し、男たちを犯して殺していました。竜水と意気投合して愛人となりますが、皮を剥がされてハンググライダーの材料にされます。

単行本

全3巻
『女犯坊 法悦絵図』
太田出版版
『女犯坊 怒根鉄槌編』
『女犯坊 妖根魔陰編（江戸城編～幕末編）』
『女犯坊 超根飛翔編（明治編）』

サンデー版の内容

ストーリー

竜水の活躍から百余年後の平成の世、東京都庁の地下にある「念仏寺」が舞台です。性欲に憑りつかれた女性「空海（そらみ）」と107人の女性たちの煩悩が結集し、怪僧竜水が現代に蘇ります。竜水は現代社会で苦しむ女性たちの悩みを、パワーアップした能力で解決していきます。

竜水のセリフ「百八つの女たちの煩悩よ 恨み辛みこの竜水すべて叶えてやろう!!」は、現代版の竜水の決意を表明しています。

登場人物

竜水：エロトピア版と同一人物ですが、108人の女性の煩悩が集結して復活しました。普段は念仏寺の住職として、来訪者の相談に応じています。能力が全体的に向上しており、性交を通じて相手の怨念を見抜き、煩悩を焼き払う力を持っています。また、蹴り一撃でビルを崩壊させる腕力を持っています。現代の事情や横文字に疎い一面もあります。
空海（そらみ）：竜水復活時、念仏寺で法景に手籠めにされていた大学生。性欲が高まった結果、男漁りに走っていたところ、法景に拾われた過去を持ちます。竜水の活躍によって解放され、現代に疎い竜水の助手となります。エロトピア版の岩松に相当する役割です。
法景：念仏寺の住職で、性欲に溺れた空海を愛人としていました。竜水の超人的な力を恐れて殺そうとしますが、返り討ちに遭います。
松吉：念仏寺で寺男を長く務める中年男性。

単行本

全4巻。3巻からは一部の長編や1話完結の話は未収録。


2008年5月29日発刊 ISBN 9784408171241
2009年1月29日発刊 ISBN 9784408171654
2009年6月29日発刊 ISBN 9784408171906
2009年8月29日発刊 ISBN 9784408172033

『女犯坊』は、時代や舞台を変えながらも、常に破天荒で過激な物語として、多くの読者を魅了し続けている作品です。

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