学生自治

学生自治とは、学生自身が主体となり、自分たちに関わる事柄について話し合い、決定し、実行する活動を指します。これは通常、学校側の教職員から完全には独立した関係性の下で行われます。

学生自治の具体的な対象範囲については、その解釈に幅があります。学生の人間としての活動全体を包含すると捉える場合や、学校内の活動に限定する場合、さらに教育活動と密接に関連する活動のみを指す場合など、様々な見方があります。

歴史的に見ると、学生自治は学生の集団的な活動であることから、時に政治的な動きと結びつくことがありました。過去の日本では、学生自治の発展が学生運動へと繋がった時期も存在します。しかし、学生全体が学生自治を担うことは、組織の構造や意思決定プロセスの未整備といった課題から、必ずしも容易ではありません。そのため、大規模な活動が行われた際には、一部の学生組織による支配として批判を受けるケースも見られました。

世界に目を向けると、19世紀初頭のドイツの大学には「学生監獄」と呼ばれる制度がありました。これは、大学内で問題を起こした学生に対し、大学の事務組織や警察ではなく、学生自身が処罰を行うというものでした。

日本の学生自治は、第二次世界大戦前には、課外活動の推進に関するものを除いて、ほとんど見られませんでした。一部で学生生活における自治が求められましたが、実現には至りませんでした。

戦後の学生自治の進展は、1948年に結成された全日本学生自治会総連合が大きな契機となったと言われています。初代執行委員長の武井昭夫が提唱した「層としての学生運動論」は、学生が労働者など他の層と連携し社会変革を目指すという考えに基づき、学生同士が互いに助け合う姿勢を強調しました。しかし、大学内の関係組織との連携や、学校、企業、公益団体などの管理者層との円滑なコミュニケーションが常に十分に行われたかについては、評価が難しい側面があります。

学生自治は1960年代に最も活発となり、政治への関心が低いとされる女子大学や、高等学校においても自治組織が結成・改組される動きが見られました。

しかし、学園紛争が沈静化した後は、政治的な活動を主とする学生自治は急速に衰退しました。特定の党派に乗っ取られ一般学生からかけ離れてしまった組織や、役員のなり手がいなくなり消滅した自治会などが現れました。また、学生自身が他の学生と協力して活動することへの関心が薄れ、大学教職員の発言力が増す状況も生まれました。

1980年代以降、学生自治は課外活動を中心に再編される動きが見られました。これは、教育活動の一部を学生自身の手で運営することを目指したものです。しかし、興味別の課外活動においても学生離れが進みました。これは課外活動自体の衰退を意味し、大学で行われる教育活動の一部が損なわれることにつながります。そのため、大学内では学生自治の再活性化が、教職員・学生双方から望まれるようになっています。

1990年代以降は、学生の意見を大学運営に積極的に取り入れようとする傾向が強まり、大学運営への学生参加や、学生の意見集約を目的とした学生自治も注目されています。このような学生自治は、大学教職員との協力・信頼関係に基づいて行われる点が特徴であり、機能が明確であるという利点がある一方で、構造が複雑化しやすく、一般学生の参加を妨げる要因となるという課題も指摘されています。

なお、中学校や高等学校の生徒会は、大学などにおける学生自治とは異なるものと考えられています。生徒会活動は、学習指導要領に定められた教育課程の一部として位置づけられており、「教師の適切な指導の下で」行われることが求められます。そのため、生徒と教職員の関係は複雑であり、生徒会活動は大学の学生自治の模擬体験と見なされることもあります。生徒会の決議が職員会議によって覆されるなど、多くの制限が存在しますが、これらの制限は学校教育の趣旨に従うものであり、教職員の完全な自由裁量によるものではありません。一定の自治は可能とされています。

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