宇宙からの色

宇宙からの色（異次元の色彩）：クトゥルフ神話の傑作を徹底解説

概要

『宇宙からの色』（原題:The Colour Out of Space）、別名『異次元の色彩』は、ホラー小説の巨匠H・P・ラヴクラフトが1927年に発表した短編小説です。ラヴクラフト独自のジャンルであるコズミック・ホラーの代表作であり、クトゥルフ神話にも深く関わる重要な作品とされています。物語は、マサチューセッツ州アーカム近郊の農家で起こる不可解な事件を、測量士の視点から一人称で描いています。

物語のあらすじ

1882年6月、アーカム郊外の農家、ネイハム・ガードナーの家の井戸近くに隕石が落下します。この隕石は、様々な異常な性質を持っていました。通常の物質とは異なる反応を示し、触れたものを消滅させたり、自らも徐々に縮小して消滅していきました。

隕石の落下後、ガードナー家の周囲では奇妙な現象が次々と発生します。作物は異常な色と味になり、動物たちは奇形化し、植物は不自然な光を放ち始めます。ガードナー一家は肉体的にも精神的にも衰弱していき、妻のナビーは発狂、次男のタデウスも発狂してしまいます。家畜は灰色に変色して死んでいきます。

ネイハムは助けを求め、隣人のアミ・ピアースが様子を見に行きます。アミは既に亡くなっているナビーと、瀕死のネイハムを発見し、そこで奇妙な色彩のガス状の何かを目撃します。ネイハムは、井戸の中に光る何かがおり、それが家族の生命力を吸い取っていると証言した後、息絶えます。

警察を呼んだアミは、井戸の底から白骨化したマーウィンとジナスを発見します。井戸の水は隕石から発せられた光と同じ色に輝いており、夜には井戸から光が放たれ、デネヴの方向へ消えていきます。ガードナー家の土地は灰色の荒地と化し、「焼け野」と呼ばれていました。

しかしアミは、その土地を離れることができずにいました。彼は、光が二筋あり、一つは飛び去ったものの、もう一つは井戸に戻り、そこに留まっていると信じていました。

宇宙生物“カラー”

物語の中心となるのは、隕石から出現した謎の宇宙生物“カラー”です。その正体は不明ですが、他の生物の生命力を吸収し、影響を受けた生き物は精神を病み、生命力と色彩を失って灰色に変色し、最終的に崩れてしまいます。ガス状の生命体である可能性も示唆されています。

1984年に発表されたマイケル・シェイの小説『異時間の色彩』では、“カラー”は地球に潜む存在として描かれ、人間の生命力と恐怖心を糧とすることが明かされています。人間の肉を直接捕食することもあり、その際には獣のような姿をとるとされています。

ラヴクラフトと『宇宙からの色』

ラヴクラフト自身は、この作品を自身の最高傑作の一つと評価していました。彼は従来の宇宙人描写への不満から、人間の感覚では認識できない宇宙的恐怖を描きたいという意図を持って本作を執筆したとされています。

着想の源としては、ロードアイランド州のシチューイット貯水池やマサチューセッツ州のクオビン湖、チャールズ・フォートの『Thunderstones』、ニューヨークタイムズ紙のラジウムガールズ被爆事件などが挙げられています。

作品への影響と派生作品

『宇宙からの色』は、多くの映画、漫画、小説などに影響を与え、様々な派生作品が制作されています。映画化作品として、『襲い狂う呪い』（1965年）、『デッドウォーター』（1987年）、『宇宙の彼方より』（2010年）、『カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇-』（2019年）などがあり、漫画化も複数回行われています。

まとめ

『宇宙からの色』は、その不気味な宇宙生物と、人間の理解を超えた恐怖を描いた、ラヴクラフト作品の中でも特に優れた作品の一つです。読者は、不可解な現象と、徐々に壊れていくガードナー家の運命を通して、宇宙の圧倒的な存在感と、人間の無力さを改めて突きつけられます。その余韻は、長く読者の心に残り続けるでしょう。

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