実叉難陀

実叉難陀（じっしゃなんだ）について

実叉難陀（Śikṣānanda、シクシャーナンダ）は、652年に生まれ、710年に亡くなった訳経僧です。彼は西域、特にホータンの出身で、唐代の中国において重要な業績を残しました。実叉難陀は、仏教経典の翻訳を通じて、中国における仏教の発展に寄与しました。

生涯と業績

実叉難陀の活動は、彼が唐の王朝、特に武則天の時代に入った頃から始まります。武則天は、当時の華厳経の翻訳に不備があることを知り、ホータンに梵本が存在するとの情報を得ました。そこで、彼女は使者を送り、梵本の入手と同時に訳経者の捜索を行ったのです。この使者によって、実叉難陀は洛陽に招かれました。

彼は証聖元年（695年）に洛陽に赴き、大偏空寺での訳経に着手しました。実叉難陀の翻訳活動は、単に書物を翻訳するだけではなく、高い宗教的意義をもつものでした。特に、彼が訳した華厳経は、南インドの沙門である菩提流志や義浄三蔵、法蔵らと共に、重要な役割を果たしました。彼らと共に作業を進め、聖暦2年（699年）には80巻にも及ぶ華厳経の翻訳を完成させました。この業績は、大きな評価を受け、彼自身が広く認識されるきっかけともなりました。

実叉難陀は、華厳経の翻訳の後も精力的に活動を続け、合計で19部の翻訳に寄与しました。彼の翻訳スタイルや方法論は、後の訳経僧たちにも影響を与えました。

死と遺産

彼の生涯は多くの功績で彩られましたが、景雲元年（710年）の10月12日、大薦福寺において彼は亡くなりました。この時、実叉難陀は59歳でした。彼の死後、彼が残した訳経や思想は、後の世代に大きな影響を与えました。

実叉難陀の七層の髪塔は、後に「華厳三蔵塔」と呼ばれるようになり、彼の存在を示す重要な文化遺産となりました。この塔は、彼が成し遂げた業績を象徴するものとして、多くの人々に敬愛されています。

参考文献

彼に関する資料として『宋高僧伝』の中の「唐洛京大偏空寺實叉難陀傳」があり、彼の生涯と業績について詳細に述べられています。実叉難陀の貢献は、単なる翻訳にとどまらず、中国における仏教の深化に寄与したことから、多くの人々に感謝されるべきものです。彼の訳経を通じて、当時の人々に仏教思想が広まり、今日の仏教の基盤を形作ったと言えるでしょう。

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