訳経僧

訳経僧（やっきょうそう）

訳経僧とは、主に仏教の経典を翻訳する僧侶のことを指します。特に、古代中国において、サンスクリット語で書かれた経典を漢訳した僧侶を指す場合が多く、仏教の伝播と発展に大きく貢献しました。ここでは、訳経僧の歴史、代表的な人物、そして彼らが残した功績について解説します。

訳経僧の意義

仏教経典は、もともと古代インドの言語であるサンスクリットで記述されていました。そのため、仏教を広めるためには、経典を各地の言語に翻訳する必要がありました。中国においては、多くの僧侶たちがサンスクリット語の経典を漢訳し、中国における仏教の普及に大きく貢献しました。彼らの努力によって、仏教は中国文化に深く根付き、東アジア全体へと広がっていきました。

代表的な訳経僧

二大訳聖

鳩摩羅什（クマーラジーヴァ）: 344年 - 413年または350年 - 409年。亀茲国の出身で、仏教経典の翻訳に多大な貢献をしました。彼の翻訳は非常に流麗で、多くの人に親しまれました。
玄奘三蔵: 602年 - 664年。唐代の僧侶で、インドへ赴き多くの経典を持ち帰り、翻訳しました。彼の翻訳は、正確さと詳細さで知られています。

四大訳家

上記の二人に加え、以下の二人が四大訳家として知られています。

真諦（パラマールタ）: 499年 - 569年。インド出身の僧侶で、多くの経典を翻訳し、唯識思想の普及に貢献しました。
不空金剛（アモーガヴァジュラ）: 705年 - 774年。インド出身の僧侶で、密教経典の翻訳に尽力しました。

その他の訳経僧

法顕: 337年 - 422年。東晋代の僧侶で、陸路でインドへ赴き、仏典を収集して帰国後、翻訳を行いました。
仏陀跋陀羅: 359年 - 429年。北魏代の僧侶で、禅の思想を伝えました。

年代順訳経僧一覧（一部）

後漢: 安世高、迦葉摩騰、竺法蘭、支婁迦讖
三国 - 西晋: 支謙、康僧会、康僧鎧、竺法護
五胡十六国: 鳩摩羅什、法顕、仏陀跋陀羅、浮陀跋摩
南北朝: 畺良耶舎、曇無讖、求那跋陀羅、菩提流支、真諦、闍那崛多
隋: 達磨笈多、彦琮
唐: 玄奘三蔵、義浄、善無畏、実叉難陀、金剛智、不空金剛
宋: 施護

チベット仏教における訳経僧

チベット仏教においては、サンスクリット語からチベット語への翻訳を行った訳経僧は「ロツァワ」と呼ばれます。代表的な人物として、ヴァイローツァナ、リンチェン・サンポ、マルパ・ロツァワなどがいます。

訳経史区分

訳経事業は、時代ごとに異なる特徴を持っています。それぞれの時代において、翻訳のスタイルや重視される点が異なり、それが仏教の受容と発展に影響を与えました。

訳経僧たちの努力によって、仏教経典は様々な言語に翻訳され、世界各地に広まりました。彼らの功績は、今日の仏教文化の基盤となっています。

関連項目

サンスクリット経典
* 三蔵法師

もう一度検索